愛 宕 隧 道
身近な土木の今回は、東京都にあるトンネル、「愛宕隧道(あたごずいどう)」です。土木と言えば代表的構造物はトンネルと橋やダムですが、本欄でトンネルのことを採り上げるのは今回が初めてです。

愛宕隧道とは、東京都の東京タワーや芝公園に近い愛宕山を貫いているトンネルで、愛宕山の上にはNHK放送博物館や愛宕神社があります。

ちょっと立ち止まって、トンネルと隧道とはどのような関係にあるのでしょうか。「隧」という文字はふつう「すい」と読みますが、この場合は「ずい」と読みます。隧道とはトンネルのことです。トンネルには、地下鉄のトンネルや高速道路の地下トンネルなどもあり、また下水道や水道、ガスなどのトンネルもあります。しかし、これらのトンネルは通常隧道とは呼ばれません。一般的に隧道とは、いわゆる「山岳トンネル」のことで、山をくりぬいて作ったものを差しています。中には、普通は「青函トンネル」と言っていますが正式名称として「青函隧道」のように付けられているものもあります。

国土交通省のこのページには「古くは、「隧道」と呼ばれていましたが、最近では、一般的に「トンネル」と呼ばれることが多くなっているようです。」とあって、時代の差と言っています。これが正解のようです。

トンネルの分類や用途などについては、一般社団法人日本トンネル技術協会のサイトに、「トンネルとは?」と言うページがありますのでご覧ください。

今回の愛宕隧道は、東京都23区内にある唯一の道路山岳トンネルと言われています。地下鉄や高速道路、水道下水道のトンネルは歩いて見学できませんが、この隧道は道路トンネルでしかも歩道があるため、ゆっくりと中を眺めることができます。

         
写真1 都営地下鉄御成門駅A6出口(2015年3月7日撮影) 写真2 愛宕隧道とエレベータ塔(2015年3月7日撮影) 

愛宕隧道に近い都営三田線御成門駅はエレベータ出入り口ですが、その壁に「海抜3.0m」の表示があります(写真1)。写真ではちょっと見づらい大きさですがご容赦願います。それにしても、「海抜3.0m」の近くに山岳トンネルが存在するのはちょっと不思議な気がします。

出入り口を背にして右の広い通りは「日比谷通り」で、通りを左手方に行きすこし先の「芝郵便局」交差点を左折します。しばらく行くと写真2のような光景が見えます。これが「愛宕隧道」でこんもりした山が「愛宕山」です。何でも自然地形の山としては東京都23区内で最も高く、山の上の愛宕神社境内には、三等三角点があり、25.7mとなっていると言います。

もっとも、標高25.7mが23区内で最も高い地形というわけではなく、西部の台地部は標高30mを越えます。ただ、台地には「山」という地名がなく、高い地形でも人工地形もあるため、この愛宕山が、自然地形の山では最も高い、となるのだそうです。

 
写真3 愛宕山エレベーター(2015年3月7日撮影) 写真4 「愛宕隧道」銘板

写真2の左に塔が見えますが、これは写真3にあるよう、「愛宕山エレベーター」の塔で、長い急な階段(愛宕神社に上がる石段は「出世の石段」と呼ばれており、その由来は講談で有名な「寛永三馬術」の中の曲垣平九郎(まがきへいくろう)の故事によります。)では参拝もままならないと考えたかどうかわかりませんが、高齢化社会ではありがたい事でしょう。もう一つ、この山はNHKは最初に電波を発射したところで、今は「NHK放送博物館」がありますが、そこへ行くにも利用できます。(2015年3月現在博物館はリニューアル閉館中です。)

写真4は写真3のほぼ中央坑口下側に見える銘板の拡大です。もう少し詳しい銘板があればと思います。

 
写真5 東側口(2015年3月7日撮影) 写真6 愛宕隧道内部(2014年4月12日撮影)  

写真6はエレベータ塔側から見た愛宕隧道の内部です。全長はわずか76.6m、幅は9m、両側に歩道が2.5mずつあります。その結果車道は4.0mで、写真5側(愛宕下通り側)からの一方通行になっています。

中に入ってみると、きれいに覆工されていて(写真6)新しい壁が見えます。

 
写真7 工事銘板(2014年4月12日撮影) 写真8 西側口(2014年4月12日撮影) 

工事銘板(写真6)によれば平成15年から同16年にかけて耐震補強工事が行われたとあります。「薄肉鋼板補強工」により「SM490」鋼板で覆工したとわかります。施工会社は、おそらく元々の隧道を建設した会社ではないか(建設業界では、往々にしてそのような事が行われてきました。最近はそうでもなくなったようですが)と思って調べてみたら案の定1930年(昭和5年)に竣工した工事の施工会社と同じでした。放送博物館に当時の新聞記事のパネルがあったと言うことですが、リニューアル後は果たして残されているでしょうか。

短いトンネルですから歩いてもあっという間に通過してしまいました。写真8は振り返って見たところです。歩行者はある程度目立ったのですが、車はほとんど通っていませんでした。なお、愛宕隧道については、国土交通省関東地方整備局発行の「みらいこくど関東」2008年2月号に特集されているようですが、未見です。

愛宕隧道だけではちょっとさみしいので、おまけとしてトンネルを2箇所紹介します。

 
写真8 築地虎ノ門トンネル①(2014年4月12日撮影) 写真9 築地虎ノ門トンネル②(2014年4月12日撮影)

ビルの地下を道路が通ることで知られた「築地虎ノ門トンネル」は、愛宕隧道のすぐ近くにあります。写真8と写真9は、開通したばかりのトンネル入り口の様子です。この道路は、「マッカーサー道路(正式には「東京都市計画道路幹線街路環状第2号線」)」として知られて計画されており、高層ビルが建ち並んだところとなったので幻に終わるかと思われましたが、ビルの下を通過する事が可能になったため、その実現がかないました。

 
写真10 朝日トンネル石岡側入り口(2013年3月22日撮影)  写真11 朝日トンネル土浦側入り口(2013年3月22日撮影)  

おまけのもう一つは山岳トンネルそのもので、茨城県の石岡市と土浦市を結ぶ朝日峠直下に掘られた「朝日トンネル」です。私の運営する別サイトで、周辺の史蹟などと一緒に動画付きで紹介しています。こちら。しかしながらリンク先のサイトへ飛ぶのが面倒な方向けに、トンネル通過部分の動画を下に載せますのでご覧ください。

トンネルの内部を紹介するのはなかなか難しいのですが、「身近な土木」の本欄としては、是非とも必要なテーマですので少々ですがご覧ください。


 
朝日トンネル通過(2013年3月22日撮影) 


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