ニューマチック・ケーソン工事

 

ケーソン工事とは、地上で構築した躯体を地中に(又は海中に)下部を掘削しながら徐々に沈める工事で、シールド工事などの深い立坑や橋梁の橋脚工事などで採用されています。ケーソン工事には、中に人間が入って小型のショベルで掘削するオープン・ケーソン方式と、内部への地下水(と、それに伴う土砂)の流入を防ぐために空気圧をあげて掘削を行うニューマチック・ケーソン方式があります。
この空気圧をあげて地下水圧に対抗する工法のことを一般には圧気工法といい、以前はシールド工事などで多用されてきました(私も、最初の現場は圧気シールドでした)。しかし、シールド機の密閉型(泥水式や土圧式)の進歩や、作業者の健康問題(潜函病発症などの危険防止のため、気圧を一定程度あげると作業者の滞在時間が短く規制される)現在ではほとんど使用されていません。

では、圧気工法が世の中からなくなったかというと、そうも言えず、最近の和歌山の泥水噴出し事故でもわかるように、ニューマチック・ケーソンとして、むしろ増加しているようです。
シールド工事と違って、ケーソン工事は縦に掘りすすみますから、必要な気圧は工事の進捗に従って増加していきます。大深度では作業者の滞在時間が非常に短くなり、能率が低下しますので、近年、無人化施工が取り入れられてきています。

今回ご紹介する工事は、日本技術士会建設部会の見学会に参加してみてきた最新の無人化ケーソンです。圧気の関係上、作業室内部には入れなかったので、同工事のパンフレットからいくつか画像を引用させてもらっています(写真は全て本Web主宰者の撮影です。現場の許可済みです)。

まず、工事の概要です。
工事名は、「中央雨水幹線整備計画中央雨水ポンプ場建設工事」です。現在ケーソンを近接して2基(ポンプ棟と雨水滞水池)同時に施工している、非常に珍しい工事です。
発注者は千葉市(下水道局建設部下水道施設建設課ポンプ場建設係)で、見学でお世話になったのは「大成・フジタ・大林・東亜・伊藤建設共同企業体」です。(感謝)

工事パンフレットより

ケーソン工事の順序は別の画面でご覧下さい。

写真1 現場全体の外観です。建築現場と間違えそうです。

写真2 土砂搬出用バケットが出てきました。

写真3 左の青いタワーがABキャリアです。赤白2基のはタワークレーンです。

写真4 土砂ホッパの様子です。

函内で掘削された土砂を地上まで排土する設備を、ABキャリアというのだそうです。この下に、土砂ホッパがあり、土砂をダンプトラックに積み込んで場外に搬出します。

このケーソンの無人化施工は、遠隔操作で行われます。写真5がその操作室です。モニタを見ながらレバーを操り掘削します。

写真5 遠隔操作室内部です。

写真6 遠隔操作用機器と画面です。

写真6の画面には、左手に掘削機が映っています。

写真7 遠隔操作中です。

写真8 画面拡大(写真7とは違う掘削機です)。

実際に操作をしていただきました。操作自体は誰でも出来ます(千葉市民を招いた見学会では、子どもさんに操作してもらい、大好評だったそうです)が、まったく掘削したことの無い人では、作業はやはり難しいそうです。作業室の内部の様子を写真8で拡大しています。

無人化とは言っても、機械のメンテナンスなどで、週に何回かは入らなければならないようです。地下水位が高いので、また掘削深度も大きいので、加える圧力も大きくなります。0.1MPa以上になると、法的規制がぐんと厳しくなります。

写真9 ホスピタルロックです。

写真10 躯体構築中です。

「高気圧作業安全衛生規則」第42条には、以下のようにあります。

【事業者は、圧力〇・一メガパスカル以上の気圧下における高圧室内業務又は水深十メートル以上の場所における潜水業務を行うときは、高圧室内作業者又は潜水作業者について救急処置を行うため必要な再圧室を設置し、又は利用できるような措置を講じなければならない。】

この現場では、工事概要に示したとおり、最終的には0.289MPaとなる予定です。これに基づいて設置されているのが、写真9のホスピタルロック(再圧室)です。
減圧して大気圧下に出ても、減圧症を発症した場合などは、もう一度加圧し、ゆっくりと減圧して症状をなくす必要があります。その場合に、このホスピタルロックが使用されます。私は何度も圧気内に入りましたが、0.1MPaを超えた現場は無く、従って現場にホスピタルロックを設置したことはありませんでした。本現場は大規模現場なので5基がすえつけられています。ちなみに、この現場では、使用する事態は発生していないとのことです。

地上では、沈下にあわせて躯体の構築が行われています(写真10)。

このケーソン工事によって出来上がった構造物は、千葉市の雨水を集めて運んでくる管渠の終点になっており、初期の汚れた雨水は沈砂池にため、後に処理場に送って処理の上海に流す一方で、汚れの無くなった雨水は雨水帯水池に貯留して、直接海に放流する仕組みになっています。そのためのポンプ場は、両ケーソンの間に後で構築されます。

今回は、雨の処理という私たちにとって「身近な」事項が、このような大規模な「土木」工事によって行われるというご紹介でした。

 

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