近代土木遺産訪問(1)
土木学会では近代土木遺産の推奨選定を行っており、『日本の近代土木遺産(改訂版)―現存する重要な土木構造物2800選』としてまとめられ発売されています。仕事などでどこかを訪問するときは、出来るだけ見て回ることにしていますが、今回はその中で最近みてきたものをご紹介します。

最初は愛知県名古屋市の「名古屋市旧第一ポンプ所と東山給水塔」です。
残念ながらポンプ所は工事中(2011年11月)で、みることはかなわなかったのですが、写真のように給水塔は少し遠くからですが眺めてきました。給水塔
名古屋市東山給水塔   
についてはこのシリーズでも茨城県水戸市の例について「配水塔」としてご紹介したことがあります。

見比べると(私だけかもしれませんが)、何となく同じような雰囲気が漂っている気がします。
造られた年代をみると、名古屋の例は昭和5年、水戸市の例は昭和7年ですから、何かこの当時の設計トレンドが、こんな形の塔を造らせたのかもしれません。

不思議なことに、東京スカイツリーや東京タワーなどは建築物なのですが、これらの「塔」は土木構造物です。形ではなく中身だよと言う訳かもしれません。

現在はどうなっているのか気になったので調べてみると、名古屋市上下水道局に次のような文章がありました。
【東山給水塔は、昭和5年3月に建設され、昭和48年2月までの43年間、千種区覚王山一帯の高台に給水するための配水塔として利用されてきました。昭和54年3月からは、災害対策用の応急給水施設に改造し、再利用しています。 】
つまり現役ですね。
一方、水戸市の方は水戸市水道部によれば、平成12年(2000年)に運転を終えたとありますので定年を迎えたようです。

名古屋に来たなら名古屋城ももちろんですが、ぜひとも見たいところがありましたので、そこへも行ってきました。というより、上の東山給水塔に行くための最寄りの地下鉄駅がそれで、「覚王山駅」と言います。
名古屋市営地下鉄覚王山駅
写真のような駅で別に「近代土木遺産」ではないのですが、この駅に続くトンネルは、日本で初めて円形シールドで施工された所なのです。

また、この施工会社の社史「株式會社熊谷組四十年史」177頁には、「当社がソ連へ機械化シールドの視察に行って得た知識を名古屋市当局が受け入れ、わが国最初の鉄筋コンクリートセグメントを使用した」という意味の記述もあります。

当然ながら駅からは暗くてトンネル部分はよく見えませんでした。それでもちょっとだけシールド工事に携わっていた身には、ここも「遺産」を感じたものです。

駅名には「山」とありますが、現地で見るとなだらかな坂が続いてその頂上が台地状になっています。土木学会の「わが国シールド工法の実施例・第1集」128頁の縦断面図では最も高くて地盤高さが41m程度、発進立坑附近から見ると比高14.3m程度ですから、まあ山と言うより丘ですね。


ついでと言っては失礼ですが、上でスカイツリーと東京タワーに触れたので、名古屋にある塔、「名古屋テレビ塔」も眺めてみます。
名古屋テレビ塔
こちらは、日本で最初のテレビの電波塔(アンテナ頂高さ180m)ですが、デジタル化に伴って遂に引退し、現在第二の人生に向かうべくリニューアル中のようです。

1953年に着工し、全てが人海戦術で、基礎掘削もコンクリート練りも鉄骨を持ち上げるのまで人力であったと、上のリンク先に記述があります。

あいにく曇っていたので、鮮明とはいえない写真になってしまいました。

こちらの方は予習をしていかなかったため、眺めただけで近づきませんでした。帰ってきてから復習の時に気がつき、すぐ隣に近いビル(この写真はそのビルの窓越しに撮影したものです)にいたのにと歯ぎしりです。
(復習も大切ですが、予習も大切ですよ)





近代土木遺産を訪ねる人は多いようで、東山給水塔を巡っていたとき、何度も同じ人に会いました。その時は気がつきませんでしたが、最後の方になって私と同じようにカメラを手にしていた事に気がつきました。お話が出来ればよかったなと思っています。

身近な思いがけないところにも「土木」あります。どうぞ目をこらしてみてください。

(サイトリニューアルに従って、本シリーズレイアウトも若干のリニューアルを行いました)

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