土木講座_2級土木合格を超えて 

 第1部 土木一般

第1章 土工 

第4節 法面保護工

法面保護工は、盛土や切り土法面の浸食や風化を防止するために、植物やコンクリート、石材などを用いた構造物で法面を保護し、法面の安定を図るために行うものである。
表1.4.1 に主な法面保護工を挙げてあるが、このほか、石や土の落下を防ぐ落石防止柵工や落石防止網工及び湧水による法面洗掘を防止するための法面排水工なども広義には法面保護工に含められる。また、法面には垂直な面も含まれる。

法面保護工は、法面安定の目的のほか、環境の保全、良好な景観の維持などについても重要視されている。


(1) のり面保護工の工種・目的・特徴

のり面保護工の工種・目的・特徴をまとめれば、表1.4.1 のようになる。


  表1.4.1 法面保護工の工種と目的・特徴 
 
  分類 工種 目的・特徴   
  植生工  種子散布工  浸食防止、凍上崩落抑制、全面植生(緑化)  
   客土吹付工  
   植生基材吹付工  
   植生マット工  
   植生シート工 (※1)  
   植生筋工  盛土のり面の浸食防止、部分植生  
   筋芝工  
   植生土のう工  不良土、硬質土法面の浸食防止  
   苗木設置吹付工  浸食防止、景観形成  
   植栽工 (※1)  景観形成  
  構造物工  編柵工  法面表層部の浸食や湧水による土砂流失の抑制  
   じゃかご工  
   プレキャスト枠工  中詰が土砂やぐり石の空詰めの場合は浸食防止  
   モルタル吹付工 (※1)  風化、浸食、表面水の浸透防止  
   コンクリート吹付工  
   石張工(※2)  
   ブロック張工(※2)  
   コンクリート張工(※2)  法面表層部の崩落防止
 多少の土圧を受ける恐れのある箇所の土留め、岩盤はく落防止
 
   吹付枠工  
   場所打コンクリート枠工  
   石積擁壁工  ある程度の土圧に対抗  
   ブロック積み擁壁工 (※1)  
   ふとんかご工  
   井桁組擁壁工  
   コンクリート擁壁工  
   盛土補強土工 (※1)  すべり土塊の滑動力に対抗  
   切り土補強土工   
   ロックボルト工 (※1)  
   グラウンドアンカー工  
   杭工  
   
(※1) リンク先に写真がある。

(※2) 法面勾配(※3)が1:1より緩いのり面に施工したものを一般に張り工という。

(※3) 勾配の表し方で度(°)で表す以外は、工種別などによっておおむね次のようになっている。

             図1.4.1 勾配の表し方



(2) 法面保護工の選定

法面が植生可能な土質で、すべりなどが発生しない場合、経済上も景観上も植生工を用いるのがよい。

法面が浸食又は表層すべりを起こしやすい土質の場合は、植生工に編柵工、のり枠工を併用する。また、ブロック張り工、石積み工を用いることもある。

湧水のある場所には法枠工は効果的である。

表面水が集中して流下するおそれのある箇所、日光や雨が当たらない箇所は、植生工では生育が良くないのでブロック張り工、石張り工を用いる。

放置しておくと風化が進行する法面には、モルタルあるいはコンクリート吹付工が適しているが、湧水のある箇所や湿潤な法面及び凍上する法面などでは避ける。
法枠工の中詰めを石張り、コンクリート張り、ブロック張りとした工法も吹付工と同じ目的で用いられるが、吹付工に比較してのり面の補強効果が期待できる。

蛇籠工は、湧水の多いのり面を被覆し、土砂の流出を防止するのに用いられる。また、崩壊を起こした法面の土留、凍上しやすい法面の抑えとしても効果的である。

湧水のある法面、湿潤な法面では、水平排水孔、地下排水溝など地中排水施設や、法肩排水溝、縦排水溝などの地表排水施設を施工する。また、空石張りした法枠工、良好な裏込め材料を用いた空石張り工、空石積み工を用いても効果的である。

き裂のある岩の法面、大きな浮石のある法面などでは、法面アンカー工が用いられる。

モルタル吹付工及びコンクリート吹付工は湧水のない切土法面に用いられる。

隣接の構造物や地形の関係で安定勾配法面での施工ができないときや、長大法面とするよりも擁壁によって全体的に急な法面にした方が有利となる場合には、擁壁を採用する。

補強土工は、鉄筋や帯鋼、ジオテキスタイルなどの補強材を盛土内あるいは地盤と盛土の境界部、地山などに配置して、土圧の軽減や盛土及び斜面の安定比、あるいは地盤の支持力の増大などを図る工法の総称で、補強土擁壁、切土法面及び自然斜面などにおける補強土工のほか、盛土補強や軟弱地盤における盛土補強工などがある。

法面保護工については非常に多くの工法があり、また組み合わせて使用される場合も多い。表1.4.1を基本に、使用されるのり面の性状と保護する目的をよく学習することが求められる。

以下に、いろいろな場面の法面保護工の実例写真を示す。


植生シートは、わら、むしろ、不織布、化繊ネット、水溶性紙などで出来ていて、竹串などを用いて、法面に固定する。
シートは表面浸食の防止効果があり、施工も簡単であるが、シートが密着するよう法面は十分平滑に整形することが必要である。

マットの場合は、材料には、厚みのある不織布、紙、わら、すだれ、フェルトなどが用いられる。 これに種子、高度化成肥料、生育基盤材などが装着されている。
 写真1.4.1 植生シート(むしろ)  写真1.4.2 植生シート(むしろ)のアップ  

     植生シートや植生マットは、急勾配の法面には適さない。
その場合良く用いられるのが、写真1.4.3と写真1.4.4のブロック積み擁壁である。

写真1.4.3はブロックを積んだ背後に裏込コンクリートを打設しているところである。

写真1.4.4.は完成直後の様子である。目地と水抜き穴に注目のこと。
 写真1.4.3 ブロック積み擁壁の裏込コンクリート工  写真1.4.4 ブロック積み擁壁  

  先に述べたように、法面保護工は、工法単独での施工もあるが、二種類以上の工法を組み合わせて施工する場合もある。

写真1.4.5はモルタル吹付工による法面保護工であるが、ロックボルト工と組み合わせてある。

写真1.4.6はロックボルト工の頭部の様子で、これは従来型の、補強材(地中に打ち込んである)、プレート、ナットを組み合わせたシンプルな構造のものである。
 写真1.4.5 モルタル吹付工+ロックボルト工  写真1.4.6 ロックボルトのプレート及びナット  

  同じく、法面保護工の組み合わせでも、写真1.4.7〜写真1.4.8のように大規模な場合、法面の性状によって工法を変えて組み合わせる場合がある。

右側はせり出している法面で、お左側は中央に凹となっているようである。

左側は法枠工の中詰めが緑化しつつある。 

(もう少し接近すれば細部まで判明したのであるが、谷のこちら側からなのであまりよくわからないのが残念である。)
 写真1.4.7 法枠工+モルタル吹付工(全景)  写真1.4.8 法枠工+モルタル吹付工(アップ)

  法面が水に接する河川堤防などでは、崩壊を招かないような構造にする必要がある。

写真1.4.9はダム湖に張り出した部分のブロック張工と法枠工の例である。

写真1.4.10は、河川の堤防をかごマット工法で補強した例である。類似の方法(金網に石を詰める)に、じゃかご工法やふとんかご工がある。
これらの工法の違いは「かごマット工法技術推進協会」(当サイトの管理外)の説明を参考にするとよい。
 写真1.4.9 ブロック張工+法枠工  写真1.4.10 かごマット工法

 
 写真1.4.11 プレキャスト擁壁工  写真1.4.12 プレキャスト擁壁断面 写真1.4.13 プレキャスト擁壁施工状況

写真1.4.11は、石積みのような模様を表面に加工したプレキャスト擁壁で、垂直面になっている。写真1.4.12はその断面である。写真1.4.13は別の現場の別の製品であるが、プレキャスト擁壁のL型断面と施工法がよくわかる。手前側が盛土となる。

  写真1.4.14は、盛土補強土工法による垂直壁である。
補強土工についてはこちらのリンク(当サイトの管理外)を参照のこと。

先に述べているように、法面保護工は、法面そのものの保護という目的とは別に、景観形成という目的も併せ持つ。
写真1.4.15は、採石場の跡地に植栽して景観を形成している様子である。下部はまだ若いが、上部ではすでに緑で覆われつつある。
 写真1.4.14 盛土補強土工  写真1.4.15 植栽工

  写真1.4.16は、上部の緩い法面に施工する緑化工がまだ施工されていない状況である。
雨水対策を十分に施しておかないと、法面の崩壊を招きかねない。

規模が小さい場合、写真1.4.17のように、シートなどで養生する事も行われる。

(この写真は、茨城県水戸城址の空濠法面修復時のものである。)
 写真1.4.16 法面緑化施工前状況  写真1.4.17 法面緑化施工前仮養生の状況
図表の出典 
表1.4.1  「道路土工−のり面工・斜面安定工指針」(日本道路協会)をベースに一部を追加して筆者作成。
 図1.4.1  筆者作成 
 写真1.4.1〜1.4.17  筆者撮影

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