土木講座_2級土木合格を超えて 

 第1部 土木一般

第2章 コンクリート工 

第3節 コンクリートの性質

本節で述べる事項は、検定試験での出題は少ないが、コンクリートを取り扱う上で知っておかなければならない基礎的な事であるから、よく勉強しておかなければならない。たんなる知識としてではなく、実際のコンクリートについて、触って感じてみることが大切である。

今回は文字が多いので読みにくい。ご容赦願いたい。


(1) フレッシュコンクリートの性質

フレッシュコンクリートとは、まだ固まらない状態にあるコンクリートのことである事は第5回で述べた。重複するが、改めてフレッシュコンクリートの性質を表現する用語を確認する。

① ワーカビリティー
材料分離を生じることなく、運搬、打込み、締固め、仕上げなどの作業が容易にできる程度を表すフレッシュコンクリートの性質のことであるが、とくに数値で表現されるものではない。それは、運搬、打込み、締固め、仕上げと、フレッシュコンクリートを取り扱う場面全般にわたる「作業の容易さ」を表すからで、感覚的な、よい、わるい、で表現される。「ワーカブルなコンクリート」と言った具合である。

② コンシステンシー
JIS A 0203 「コンクリート用語」によれば「フレッシュコンクリート、フレッシュモルタル(※1)、及びフレッシュペースト(※2)の変形又は流動に対する抵抗性」のことである。コンシステンシーが小さいとは「柔らかい」と言うことであり、作業は容易であるが、材料分離が起きやすいと言うことであるから、これだけでは「よいコンクリート」と判断する事はできない。

コンシステンシーは、通常「スランプ値」「スランプフロー値」によって判断する。写真2.3.1は現場においてスランプ試験を行ったところを表している。
 
写真2.3.1 スランプ試験
 
 
 スランプとその試験方法などについては、コンクリートの施工の項(受け入れ検査)で学ぶ。





(※1)フレッシュモルタル
「モルタル」とはJIS A 0203 「コンクリート用語」によれば「セメント、水、細骨材及び必要に応じて加える混和材料を構成材料とし、これらを練り混ぜその他の方法によって混合したもの、又は硬化させたもの。」であるから、まだ固まらない状態のモルタルのことである。

(※2)フレッシュペースト
「ペースト」とは「セメントペースト」のことで、JIS A 0203 「コンクリート用語」によれば「セメント、水、及び必要に応じて加える混和材料を構成材料とし、これらを練り混ぜその他の方法によって混合したもの、又は硬化させたもの。」であるから、まだ固まらない状態のセメントペーストのことである。




③ プラスティシティー
JIS A 0203 「コンクリート用語」によれば、「容易に型枠に詰めることができ、型枠を取り去るとゆっくり形を変えるが、くずれたり、材料が分離することのないような、フレッシュコンクリートの性質。」である。この性質も、とくに数値によって表されるものではない。

④ フィニッシャビリティー
JIS A 0203 「コンクリート用語」によれば、コンクリートの打上がり面を要求された平滑さに仕上げようとする場合、その作業性の難易を示すフレッシュコンクリートの性質。」である。この性質は、粗骨材の最大寸法、細骨材率(※3)、細骨材の粒度(※4)、コンシステンシーなどによって影響を受けるが、他の性質と同様に、数値化されるものではない。

(※3)細骨材率
JIS A 0203 「コンクリート用語」によれば、「コンクリート中の全骨材量に対する細骨材量の絶対容積比を百分率で表した値。」のことである。

(※4)粒度
リンク先は土粒子の粒度試験の写真であるが、骨材も同じようにふるいによってその粒度の分布を知ることができる。試験の結果もまた同じように整理する事ができる(粒径加積曲線など)。それから得られた分布の度合いによって、フレッシュコンクリートの性質がどのような粒度の場合どのように変化するかがわかる。


(2) 硬化したコンクリートの性質

コンクリートが硬化すると、フレッシュコンクリートとは違った性質を持つようになる。硬化後の性質は、コンクリート構造物の性質とほぼ同義語であるような重要な性質である。

① 強度
硬化したコンクリートは強度が発現する。強度は、圧縮強度、引張り強度、曲げ強度に分けられる。圧縮強度は「呼び強度」として前回勉強したものである。
硬化したコンクリートは圧縮力にはかなり耐えられるが(高強度、超高強度コンクリートと呼ばれ超高層ビルなどに使用されつつあるものは、設計基準強度が36N/mm²を超えるものや、最近では60N/mm²超のものもある。)引張り強度はその0.1~0.07程度であり、引張り力に弱いという性質がある。同様に曲げ強度も圧縮強度の0.2~0.125程度である。

強度については以下の点があるから留意する。
コンクリートの強度は、配合時の水セメント比(W/C)に大きく影響される。
空気量が増えると、圧縮強度は低下する。
養生の際湿潤養生をすると乾燥状態より強度が大きい。

②熱に対する反応
コンクリートは温度が上昇すると膨張する。逆に冷えると収縮する。コンクリートと鉄筋の熱膨張係数はほぼ等しい。このため、鉄筋コンクリート構造が成り立つ。
気温が高く、湿度が低いと、収縮によるひび割れが発生しやすい。

③クリープ
応力を作用させた状態において、弾性ひずみ及び乾燥収縮ひずみを除いたひずみが時間とともに増大していく現象。(JIS A 0203 「コンクリート用語」)
長期にわたって許容応力内荷重を作用させておくと、荷重が増加しなくてもひずみが増加する現象のことをいう。

④水密性
コンクリートは厳密に言えば不透水性ではない。透水係数を大きくする(水密性を悪くする)原因の最大のものは、材料分離、ひび割れなどの施工時の欠陥である。施工時欠陥がないコンクリートでは、透水係数を支配する最大の因子は水セメント比である。W/Cが同一のときは、配合が貧より富になるにつれて透水係数が小さくなるが、富になりすぎると逆に大きくなる。
コンクリート示方書では、水密性を要するコンクリートのW/Cを、 55 % 以下と規定している。
また、「建築工事標準仕様書・同解説」(JASS 5 鉄筋コンクリート工事)においては「特に高い水密性が要求される場合は50 % 以下などとするのがよい。」と規定している。

⑤耐久性
コンクリート構造物の耐久性とは、気象の作用、化学的侵食作用、物理的作用、その他劣化を促す作用などに抵抗し、構造物に要求される力学的ならびに機能的な性能を長期間にわたって発揮する能力のことをいう。
コンクリートの劣化現象には、塩害(※5)、中性化(※6)、化学的侵食、アルカリ骨材反応などの化学的なものと、凍害(※7)、すりへり作用などの物理的なものがある。実際の劣化現象は、複数の劣化作用の複合で進行する場合が多い。

(※5)塩害
塩害とは、コンクリート中の塩化物イオンの作用により鉄筋やPC鋼材などが腐食し、コンクリート構造物に損傷を与える現象をいう。
密実なコンクリートは、アルカリ性が高く、コンクリート中の鋼材の表面には緻密な不動態被膜(腐食抑制作用のある薄膜)が生じるので、一般に鋼材は腐食しにくい。しかし、コンクリート中に塩化物イオン(Cl )が一定量以上存在すると、不動態被膜は部分的に破壊され、鋼材は腐食しやすくなる。
コンクリートに塩化物イオンが侵入する原因として、(1)海砂、混和剤、セメント、練混ぜ水などに最初から含まれている場合(2)海水飛沫や飛来塩化物、凍結防止剤などの塩化物がコンクリート表面から浸透する場合がある。
鋼材の腐食で生じたさびの体積はもとの鋼より大きい(2~3倍)ので、その膨張圧によりコンクリートにひび割れが発生する。ひび割れが生じると、酸素と水の供給が容易となり、腐食は加速され、かぶりコンクリートの剥落や鋼材断面積の減少による部材耐力の低下に至る。

(※6)中性化
中性化とは、空気中の二酸化炭素の作用を受けて、コンクリート中の水酸化カルシウムが徐々に炭酸カルシウムになり、コンクリートのアルカリ性が低下する現象をいう。
鋼材の周囲のコンクリートが中性化すると鉄筋の不動態被膜が破壊されるため、水や酸素の浸透により鉄筋がさび、構造物の耐荷性や耐久性が損なわれる。コンクリートの中性化に影響する材料や要因は、水セメント比、セメントと骨材の種類、混和材料などがあるが、密実なコンクリートほど中性化の進行は遅い。

(※7)凍害
コンクリート中の水分が凍結すると、水の凍結膨張(約9%)に見合う水分がコンクリート中を移動し、その際に生ずる水圧がコンクリートの破壊をもたらす。この破壊はセメントペースト中、骨材中および両者の界面で生じる。
耐凍害性が小さい骨材を用いると、骨材が割れることにより、コンクリートの劣化を生じさせる。また、吸水率の大きい軟石を用いたコンクリートでは、凍結時に骨材自身が膨張し、表面のモルタルをはじき出すことがある。これを、ポップアウトという。
コンクリートの耐凍害性は、空気量ときわめて密接で、同一空気量の場合では、気泡が小さいほど耐凍害性は向上する。


(3)付録
公益社団法人土木学会の庭の奥まった隅に、写真の鉄筋コンクリート標柱がある。その説明板によれば、これは日本最古の鉄筋コンクリートであるとのことである。貴重な物であるからその説明を全文引用しておく(改行等は筆者。また年月日数字は原文のまま)。

 
日本最古の鉄筋コンクリート柱

このコンクリートの柱は、米海軍横須賀基地内にあったものです。以前は、日本海軍横須賀鎮守府と民間の土地との境界を表す境域標柱として使われていたものが、鎮守府の拡張に伴って、基地内に残されそのままになっていたものを、米海軍が掘り起こし横須賀市へ変換された標柱の内の1本です。

この境域標柱は、「明治33年2月13日」(1900年)の銘があります。日本に残る古い鉄筋コンクリートは、建物では三井物産横浜支店の床(明治44年)、橋では京都の琵琶湖疏水橋(明治36年)などがあります。年号があるものでは、このコンクリート柱が最古の物と考えられます。

大きさ:15㎝×16㎝×2m 重さ:約100㎏

コンクリートの4面にかかれている文字
「横須賀軍港境域標」「明治33年2月13日」「海軍省」「第◯◯号」(号は旧字號)
 
  写真2.3.2 日本最古の鉄筋コンクリート  

 
図表の出典 
写真2.3.1    筆者撮影
写真2.3.2    筆者撮影

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