土木講座_2級土木合格を超えて 

第1部 土木一般

第3章 基礎工 

第3節 既製杭基礎

既製杭とは、工場などで製作された杭のことである。材質で大別すれば、コンクリート杭と鋼管杭および両者の合成杭がある。木杭もその一種と認められるが、現在では小規模な建築や特殊な土木構造物にしか適用されないので、本項では触れない。

基礎としてはコンクリート系の杭が多用され、その種類には、RC杭、PC杭、PHC杭などがある。主流はPHC杭((Pretensioned Spun High Strength Concrete Piles;プレテンション方式遠心力高強度プレストレストコンクリートパイル)コンクリートの圧縮強度が80N/mm2以上で、軸方向にPC鋼棒を使用した杭のこと)である。

また、杭基礎の支持機構による分類としては、図3.3.1に示すように、大別して支持杭と摩擦杭がある。支持杭は、先端支持力+杭周辺摩擦力で構造物を支持し、摩擦杭は、支持層が深い場合などに採用されるもので、杭周辺摩擦力で構造物を支持するものである。

   
図3.3.1 杭基礎の支持機構  

このほかの支持機構として、水平荷重に対抗する斜杭や、複数の杭全体を一つの基礎杭として考える群杭などもある。

既製杭の弱点の一つに、運搬の関係から長尺杭の製造が不可能で、必要な場合継ぎ手施工が発生することがある。

この講座では、二級土木試験の過去の出題範囲を勘案して、材質や支持機構にはこれ以上触れることはしない。主として施工方法について述べるものである。


(1) 既製杭基礎の施工

既製杭の施工法には、打込み工法と圧入工法、埋込み工法がある。

① 打込み工法

打込み工法は、ハンマの打撃力により既製杭を地中に打込むもので、施工速度が速く、施工管理が比較的簡単な反面、騒音・振動が発生して建設公害の一つとなる。

ⅰ)ドロップハンマ工法(打撃工法)

ドロップハンマ(重錘:じゅうすい=モンケン)をウインチで巻き上げ、自由落下させて杭頭を打撃し、その反動で杭を地中に打込む工法である。
ハンマの重量は、杭の重量以上、あるいは杭1m当たりの重量の10倍以上が望ましいとされている。
        長所:故障が少なく、工費が安い。重量の大きなハンマを小さいストロークで打撃回数を多くするなど、手加減が比較的自由である。
        短所:偏心しやすい。

ⅱ)ディーゼルハンマ工法(打撃工法)

ハンマ全体がディーゼルエンジンのシリンダ(気筒)になっていて、ラムと呼ばれる重錘の落下によって吸い込んだ燃料(重油)を圧縮、爆発させ、その爆発力とシリンダを介したラムの重量で杭頭を打撃する。ラムは反力で気筒の中を上昇し、その重量で再度落下する。このサイクルを繰り返して杭を打つ。(図3.3.2参照)
        長所:工費が比較的安く、電源が不要である。地盤が硬い場合、ラムの落下高さが高くなり自然に打撃エネルギーが増す。
        短所:大きな騒音と振動を発する、排気に油煙が含まれる、地盤が軟らかいと発火しにくくなるなどがある。

     
図3.3.2 ディーゼルハンマの作動原理 写真3.3.1 防音カバー等の無かった時代のディーゼルハンマ打撃中

本工法のハンマは、最初ドイツのデルマッグ社から1951年に輸入されたので、現場では通称「デルマッグ」と呼ばれていた。1954年には国産化されている。また、1968年騒音規制法、1976年振動規制法が制定されて使用が非常に制約され、事実上民家の近くでは使用されなくなったが、それらの規制を受けない箇所では、現在も利用されている。さらに、防音カバーも、ハンマーだけで無く、リーダーや杭までも覆うものが開発されている。(写真3.3.1参照)


ⅲ)油圧ハンマ工法(打撃工法)

一般には油圧でラムを上昇させ、これを自由落下させて杭を打撃する(単動式)ハンマを言う。これに対し、油圧によってラムを強制落下させる方式(複動式)もある。
         長所:低騒音で、油煙が出ない。ラム落下高さが任意に設定でき、打撃力調整が容易である。機動性に富む。
         短所:重量が大きく、設備が大きくなる。

前述のように、公害問題でディーゼルハンマ使用が制限されたため、1976年輸入され、1979年国産化して急速に普及した。


ⅳ)スチームハンマ工法(打撃工法)

打撃動力源に蒸気または圧縮空気を用いる。
         長所:打撃力の調整が可能である。リーダーを使用しないため、斜杭打ちができる。
         短所:火気、ばい煙が発生する。

わが国では、作業効率の良いディーゼルハンマの普及に従って使用が衰退し、現在ではほとんど使用されない。


ⅴ)バイブロハンマー工法(振動工法)

偏心重錘を持つ回転子を左右一対にし、回転方向を逆にして回転させることによって水平方向の遠心力を相殺し、上下方向の力のみを回転数と同じ周期で生じさせ、その往復運動によって杭全体を上下に振動させて打込む工法である。(図3.3.3に作動原理、図3.3.4に外観図を示す)
このほか、油圧シリンダの鉛直運動により振動を発生させるピストン式加振もある。

       
図3.3.3 バイブロハンマ動作原理   図3.3.4 各種バイブロハンマ外観

本工法は、原理が振動であることから、支持杭の施工には余り適用されず、もっぱら土留め杭施工に多用されてきた。一つの機械で打込みと引き抜きが行えるという利点もある。

しかし現在では、やはり騒音振動防止の関係から、とくに市街地では次の油圧圧入工法が採用され瑠場合が多い。(しかし、理由はわからないが試験の出題は少ない。)


ⅵ)油圧圧入工法(押し込み工法)

油圧式圧入機は、最初の数本を圧入機に載せた荷重を反力にして地中に押し込み、その後は、すでに地中に押し込まれた杭を数本つかみ、その引抜抵抗力を反力にして油圧による静荷重で次の杭を押し込んでゆくものであり、騒音や振動といった建設公害を発生させないのが特長である。

また、圧入機自体が完成杭を交互につかんで尺取り虫のように杭列上を自走する機能を持つ。 杭材の種類や施工能力、現場の制約条件(N値の高い地盤、岩盤層、礫層などの硬質地盤、超低空頭地、狭隘地など)に対応した様々な機種が存在している。

但し、杭を補給するのには、写真3.3.2のように、相番のクレーンが必要である。この写真では、最初の反力受け荷重に、これ以降施工する鋼矢板を用いている。

   
写真3.3.2 油圧圧入機による鋼矢板施工  

本工法も、支持杭の施工には余り使用されない。


② 埋込み工法

現在、既製杭を施工する場合は、以下に述べる中堀り工法ないしプレボーリング工法によることが原則になっている。これは、騒音振動等の建設公害防止の観点から来るものである。

ⅰ)中堀り工法

ほとんどの杭は中空部を持っている(写真3.3.3参照)。それを利用し、アースオーガで土を掘削し、杭の自重と打撃により杭を沈設する工法である。

杭先端が所定の深さに達したら、先端処理を行って支持力を確保する。先端処理の方法は次の通りである。
     
 a)  最終打撃方式 所定の支持層表面より2~4m程度浅い位置に来たらオーガを引き上げ、打撃によって杭の先端中空部に土を充填させ、先端を閉塞させるとともに、支持層中に貫入させて支持力を得る方式である。
打込み工法と同様に支持力の推定が可能である。
 b)  セメントミルク噴出撹拌方式 支持層中でオーガ先端部からセメントミルクを噴出しながら杭先端地盤中の砂や礫と撹拌混合し、掘削によって緩んだ地盤中にコンクリート系球根を築造して支持力を得る方式である。
支持力の確認ができないため、事前の土質調査により支持層の位置確認が重要になる。
 c)  コンクリート打設方式 所定の支持層に杭を根入れし、スライム処理を行ってからトレミー管を用いて杭先端部にコンクリートを打設する事により支持力を得る方式である。
施工方法等は、場所打ち杭のオールケーシング工法とほぼ同じである。
本工法には、地盤を乱すため、打込み杭に比べて支持力が小さいが、そのために近接構造物への影響は少ないなどの特徴がある。   
写真3.3.3 中堀り工法による杭打ち
(右端がセメントミルクプラント)

ⅱ)プレボーリング工法

予めオーガなどで対象地盤を削孔し、柔らかくなった地盤に既製杭を挿入する工法である。支持力を得るためには、セメントミルク(根固め液)で根固めするが、その方式には次の2種類がある。

すなわち、先端根固め部のみを拡径して築造する方法と、拡大径のまま最初から掘削して根固め部を築造する方法である。

ⅲ)その他

高圧水によって地盤を緩め、杭の自重により沈設する方法(砂地盤)や、杭の自重と静的な荷重を利用して地盤に杭を圧入する方法(粘性土地盤)などもあるが、余り一般的ではないので省略する。


(2) 既製杭施工の留意点

①施工に関する事項
  • 本施工前には、支持層の確認(支持力と杭長)のため試験杭を施工する。この場合、支持層の変化対応のため2m程度長いものを用いる。
  • 試験杭は、施工地点の状況が十分把握されている場合は省略する事が出来る。
  • 一本の杭の打ち込みは、原則として連続施工する。
  • 建て込み時の鉛直性確認は、直行する2方向から行う。
  • 複数の杭の施工順序は、中央から外側に向かって行うものとする。(打ち込んだ杭を後から打つ杭で痛めないように順序を決める。)
  • 所定の支持層に達するまでに中間層が打ち抜けなかった場合は、1ランク大きなハンマに変更するか、中堀杭工法を併用する等の対策を採る。
②打ち止めに関する事項
  • 杭の打ち止め時期は、打込み杭の場合は、打ち止め時の貫入量、リバウンド量(1回の打撃で瞬間的に生じた最大沈下量-その後静止状態の沈下量)、根入れ深さなどから総合的に判断し、中堀り杭の場合は、オーガの駆動電流値や掘削土の状況から総合的に判断する。
  • 打ち止め一打当たりの貫入量は、2~10㎜を目安とする。原則として2㎜以下で打撃を継続してはならない。
  • 最終的な杭の支持力測定は載荷試験による。但し、打ち止め位置のリバウンド量と貫入量から求めることもできる。
③現場継ぎ手に関する事項

既製杭の現場継ぎ手は、原則としてアーク溶接継ぎ手とする。アーク溶接における注意事項は次の通りである。
  • 使用する溶接棒は十分除湿しておく。
  • 母材がぬれていたり風が強いときは中止する。

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図・表・写真の出典 
図3.3.1  「疑問に答える杭基礎の設計・施工ノウハウ 改訂2版」 200ページ 図2.1.6、2.1.7(一部筆者改変) 和田克也他 2004年 近代図書株式会社
図3.3.2  「土木工法事典 改訂Ⅴ」 190ページ 図3.2.2  2001年 産業調査会事典出版センター
図3.3.3  同上 192ページ 図3.2.4  
図3.3.4  同上 102ページ 図2.2.10 
写真3.3.1  筆者撮影(1971年12月)
写真3.3.2  筆者撮影(2003年頃)
写真3.3.3  筆者撮影(2009年5月)

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