土木講座_2級土木合格を超えて 

第1部 土木一般

第3章 基礎工 

第4節 場所打ち杭基礎

場所打ち杭とは、杭を必要とする現地の地盤に、直接孔を掘ってその内部に鉄筋かごを入れてコンクリートを打設し、地中で杭を築造する工法である。特徴を挙げれば、おおむね以下の様になる。

(1) 場所打ち杭の特徴と種類

①長所
  • 振動、騒音が少なく、近接構造物への影響も小さいので、市街地での施工に適している。
  • 既製杭のように運搬等による制限が無い(鉄筋かごを他の場所で製作し現場に搬入する場合を除く)ので、大口径の杭が施工可能である。
  • 長尺でも継ぎ手が必要なく施工できる。
  • 中間層に硬い層があっても施工可能である。
②短所
  • 現場打ちコンクリートとなるので、施工管理が難しく、信頼性が既製杭に比較して劣る場合がある。
  • 地盤を乱すため、先端支持力が小さくなる。
  • 泥水や排水の処理が必要である。
  • 小口径の杭は施工できない。
③種類

場所打ち杭には、次のような種類がある。

図3.4.1 場所打ち杭の工法による分類   

図中の深礎工法では、機械掘削による施工も行われているが、本講座では基本的に人力掘削のみを採り上げる(詳細は後述)。またこれ以外に、BH工法(ボーリング・ホール工法)もあるが、二級土木技術検定の範囲では出題されていないので省略する。)

(2) オールケーシング工法

掘削に先立ち、チュービング装置(注1)によって鋼製のケーシングチューブ(注1)を揺動(又は全周回転)しながら地中に圧入し、それによって孔壁を保護しながら、主としてハンマーグラブ(注2)を落下させて土砂を掘削する。(この、ハンマーグラブを使用する工法を「ベノト工法」といい、フランスのベノト社の考案によるもので、わが国には1954年(昭和29年)に技術導入された。)

粘性土層、シルト層に適する。軟弱地盤等では、ケーシング揺動による周辺地盤の緩みが生じる場合がある。また、掘削機が大きいので、狭隘な箇所での施工には向かない。

掘削完了後、ハンマーグラブや沈殿バケットで一次孔底処理を行い、鉄筋かご(注3)とコンクリート打設用トレミー管(注4)を建込む。スライム(注4)が堆積している場合は二次孔底処理を行い、その後コンクリートを打込む。コンクリートの打ち上がりに従ってケーシングチューブを順次引抜き、杭を築造する。

揺動式での公称杭径はφ1000~φ2000mm 、最大掘削長は40m程度である。全周回転式では、公称杭径はφ1000~φ3000mmであって、最大掘削長は60m程度となる。掘削機が比較的大きいので、狭隘な場所での施工には適さない。

ケーシングチューブによる孔壁保護のため、崩壊は防止できるが、コンクリート打設でケーシングチューブを引き抜く際、鉄筋かごが共上がり(鉄筋かごも一緒に引き抜かれてしまうこと)する事がある。これを防止するためには、有効なセパレータを使用したり、十分な余裕をとる事で対処する。

 
図3.4.2 オールケーシング掘削機の例 図3.4.3 オールケーシング工法の施工順序

(注1)
ケーシングチューブは、鋼製の管で、孔壁の崩壊防止のために使用される。杭の長さにより、溶接で継いで使用する。1本目のものをファーストケーシング(写真3.4.2の下側に「ファーストケーシング」の文字が見える。)といい、切削用のビットが付いている。チュービング装置は、このケーシングチューブを把持して揺動または全周回転させながら地盤を切削し、油圧ジャッキにより地中に押し込んでいく機械である。図3.4.2のように自走するものもあるが、写真3.4.1の中央に見える機械は自走は出来ない。これは、推進工事におけるケーシング立坑用のものであるが、基本的に杭用と同じである。

(注2)
ハンマーグラブは、その重量によって地盤に落下させて食い込ませ、土砂をつかみ取り掘削する器具である。写真3.4.2にその一例をし示す。本例は推進工事におけるケーシング立坑掘削に使用している例である。

写真3.4.1 ケーシングチューブとチュービング装置の例 写真3.4.2 ハンマーグラブの例

(注2)
写真3.4.3に示すように、杭の鉄筋配置にあわせて予め組み立てておく、かご状のもの。工場で組み立てるほか、敷地があれば現場でも組立を行う。本例は、アースドリル工法による杭に使用するため、工場で組み立て、運搬してきたものである。

(注3)
トレミー管(tremie pipe)とは、写真3.4.1に示すように、上部にホッパーを持つパイプのことで、コンクリート打設に使われる。場所打ち杭のコンクリート打設は、一般に水中もしくは泥水中で行われる。その際、コンクリートの分離を防止するため、図3.4.3⑦のように、トレミー管を打設のすんだコンクリート中に2.0m残したまま打ち上げることが重要である。
 
写真3.4.3 鉄筋かごの例 写真3.4.4 トレミー管

(注4)
スライムとは、杭の掘削施工時に生じる堀りくずのことで、ベントナイト溶液の細粒や泥水中に浮遊する土砂が混じって、杭の底部に沈殿したものをいう。
スライムは杭の支持力低下の原因となる恐れがあるため、必ず除去しなければならない。この除去作業のことをスライム処理という。
鉄筋かごの建込み前に行う一次スライム処理は、バケットなどで底をさらう方式が多く、鉄筋かご建込み後に行う二次スライム処理には、水中ポンプ方式やエアーリフト方式、サクションポンプ方式などがある。

(3) リバース工法

本工法は、孔底で回転ビットにより掘削し、土砂をサクションポンプで水と一緒に吸い出す方式と、エアリフト等により排出する方式があり、土を沈殿させた後の水を再び孔内に送り込む。このことから、ボーリング等の泥水を送る方式とは逆の循環になり、リバースサーキュレーション工法とも呼ばれる。本工法は、ドイツのザルツギッター社で開発され、1962年(昭和37年)わが国に導入された。

粘性土層、シルト層、砂層に適するが、玉石や、大きな礫、埋もれ木などがあると回転ビットによる掘削は出来ない。また、土質により適当な掘削早さを確保する必要がある。

孔壁は0.02MPaの静水圧(自然泥水圧)で防護し、連続的に掘削する。水上での作業が可能である。
この静水圧を確保するため、スタンドパイプを使用するほか、常に孔内水位を孔外の地下水位より2.0m程度高く保つ。
(自然泥水の他、ベントナイト泥水を使用する場合もあるが、二級検定試験の場合には、静水圧による孔壁防護と考えておく。)

図3.4.4 リバース機 図3.4.5 リバース工法施工順序

(4) アースドリル工法

本工法は、ドリリングバケットと呼ばれる、底開きバケットの底に切削刃の付いたものを回転させて土を削り取り、孔壁は、表層部ではケーシングを使い、それより深い部分はベントナイト泥水(安定液)などで保護する工法である。

地下水のない粘性土層などの比較的安定した地盤には最適な工法であるとされ、砂利層や礫層などでは掘削が困難になる事がある。

機械の取り扱いが容易で、掘削速度が速いが、掘削深さが大きくなるとバケットの上下動が大きくなって能率が低下し、安定液の管理が重要になる。

本工法は、カルウェルド工法とも呼ばれ、アメリカで開発され1955年(昭和30年)頃にわが国に技術導入された。

  
撮影2010年6月25日

撮影2010年6月25日
図3.4.6 アースドリル機 写真3.4.5 アースドリル施工状況 写真3.4.6 アースドリルの拡底杭工法機械例

(5) 深礎工法

ライナープレートと呼ばれる山留め材を使い、基本的には掘削から山留め材の組立まで人力で行う工法である。山留め材は、鉄筋かごをセットし、コンクリートを打設する場合も撤去しないのを原則とする。口径は1.5mから実績としては10mを超えるものまである。

土質は選ばないが、地下水位が高く水量が多かったり、軟弱地盤で地山の自立時間が少なかったりする場合は施工が困難である。玉石や埋もれ木などの障害物排除は、人力施工ために目視でき比較的容易である。

これらの特徴から、地すべり地帯の抑止杭施工や、非常に狭い場所での施工が多い。また、応用として推進工法立坑施工にも使われている。ライナープレートの施工はリンク先に詳しいので参照のこと。

本工法については、地盤工学会誌の「土と基礎」(1977年2月)の「技術手帳」にわが国での発明の経緯等があって興味深い。但し、ライナープレートそのものは、100年ほど前にアメリカで造られ、昭和30年代半ばにわが国に導入されたものであるという。

写真3.4.7 ライナープレート深礎工法(人力による掘削と組立) 写真3.4.8 ライナープレート深礎工法(機械掘削)

(6) 試験対策

本項についての出題は、各工法の特徴を正しく把握しなければ解答できないことはもちろんであるが、相互に比較する出題が目立つ。たとえば孔壁保護の方法を比較させたり、掘削方法の比較をさせたりする選択肢が与えられる。
そこで、各工法の特徴が比較できる表を作成しておく。

  表3.4.1 場所打ち杭の特徴比較  
           工法名
特徴
機械掘削   人力掘削  
  オールケーシング工法 リバース工法  アースドリル工法  深礎工法   
主な掘削方法 ハンマーグラブ・バケット  回転ビット  回転バケット  人力  
  孔壁保護方法 ケーシングチューブ  静水圧(自然泥水圧)  人工泥水圧  ライナープレート   
  杭径 80~200㎝  80~200㎝   80~120㎝  140㎝~  
  深さの限界 40m程度  60m程度  60m程度  30m程度  
  適合土質 粘土・シルト層  粘土・シルト層、砂層  粘土・シルト層  (全ての土質)   

;
              
図・表・写真の出典 
図3.4.1  筆者作成
図3.4.2  「改訂6版 建設機械施工技術の基礎知識-建設機械施工技術検定テキスト-」 566ページ 図6-68  平成13年 (財)建設物価調査会
図3.4.3  「土木工法事典 改訂Ⅴ」 207ページ 図3.2.23(一部改変) 2001年 産業調査会事典出版センター              
図3.4.4  「土木施工管理技術者指定技術講習用テキスト CPDSⅢ一般土木工学編改訂第1版」143ページ 図3.5.14 平成21年 (一社)全国土木施工管理技士会連合会         
図3.4.5  「土木工法事典 改訂Ⅴ」 209ページ 図3.2.24(一部改変) 2001年 産業調査会事典出版センター         
図3.4.6  「土木施工管理技術者指定技術講習用テキスト CPDSⅢ一般土木工学編改訂第1版」143ページ 図3.5.13 平成21年 (一社)全国土木施工管理技士会連合会         
写真3.4.1~3.4.8  筆者撮影
表3.4.1  筆者作成

目次に戻る  トップページに戻る  第16回へ進む

 Copyright(C) 1999~2014 有限会社水野テクノリサーチ All Rights Reserved