土木講座_2級土木合格を超えて 

第1部 土木一般

第3章 基礎工 

第5節 ケーソン基礎

ケーソン(caisson)とは、コンクリート製又は鋼製の大型の箱のことである。(底のないものはセルラーブロックと呼んで別のものになる。)平面形状は長方形(正方形含む)や円形(長円形含む)がある。

明石海峡大橋主塔基礎の鋼製ケーソンのような高さ65m、直径80mという巨大な水中構造物もあるが、海底の支持層が比較的浅い場合の防波堤工事などに多く使用されている。これらは陸上で構築され、運搬されて(台船に載せたり、自身で浮いて牽引される場合がある)所定の位置で沈設されるため「設置ケーソン」と呼ばれている。設置ケーソンについては、「海岸・港湾」の章で学ぶ。

これに対し、本節で対象とするケーソン基礎は、主として陸上において、橋梁の基礎など大規模な地下構造物構築に使用されるものを言い、原位置で構築されるものである。

陸上工事におけるケーソンの構築工法は、大きく次の2つに分けられる。

(1)オープンケーソン工法(opened caisson method)
地上で構築して設置したケーソン本体の中空内部を人力あるいは機械で掘削しながら徐々にケーソンを沈下させ、支持層まで到達した後にケーソン本体を基礎構造物とするものである。

(2)ニューマチックケーソン工法(pneumatic caisson method)
潜函(せんかん)工法ともいう。オープンケーソン工法の場合、軟弱地盤や地下水の多い地盤を施工すると、水や泥が作業箇所に流入し掘削作業が非常に困難に なる。それに対抗するため、あらかじめ本体下部に作業室を設け、その中に圧縮空気を送り込んで気圧の高い状態にし、この圧気によって水や泥の流入を防止して掘削作業を行う「圧気工法」を併用する。
このため、加圧や減圧を行う設備など特殊な機械設備が必要となるほか、高気圧下の作業となるため、作業員がいわゆるケーソン病と呼ばれる病気にかかることがある。従って、労働安全衛生管理には特別の配慮が必要である。

ケーソンを用いた基礎構造物の特徴としては、次の3つが挙げられる。
  • 他の基礎に比べて断面が大きいので、剛性が大きく変位が小さくなる。
  • 水平抵抗力と鉛直支持力が、ともに大きく期待できる。
  • ケーソン基礎の中空内部が、完成後地下構造物として利用できる。
陸上におけるケーソン基礎は、杭基礎工法の発達により取って代わられ、最近はあまり用いられなくなった。しかし、大規模橋梁、港湾・海洋工事や沈埋トンネル等の建設現場では今なおケーソン工法は不可欠なものであり、今も多くの施工例がある。


(1) オープンケーソン工法

オープンケーソンは、杭基礎に比べて設備が大きく、一般的に工事費が高くなる。一方、支持地盤の確認が容易で下部構造の剛性が高いという特徴を有する。
断面及び平面形状は、一般に図3.5.1のようなものが採用されている。

①施工手順

ケーソンは刃口ブロックを最初に構築し、沈下掘削に応じて輪切り状の各ブロック(リフトと称する) を継足していく 。 沈設終了後は掘削底面地盤を整形するとともにスライム処理を行い、トレミ一管を使用して水中コンクリートを打設する。
図3.5.2に、施工順序を示す。

掘削方法には、陸掘りと水中掘りがあり、陸掘りは地下水や有毒ガスの発生がない場合に行われる。人力掘削の場合もある。水中掘りは機械での水中掘削になるため、埋もれ木や転石などの除去が比較的困難である。

 

図3.5.1 オープンケーソンの形状
 
図3.5.2 オープンケーソンの施工順序 

②施工上の留意点
  • 掘削は、ケーソン沈下に必要な量のみとし、余堀して周辺地盤の緩みを招かないようにする。
  • 傾斜した場合の修正作業は容易ではないので、傾斜の原因を早めに把握して除去する。
  • 沈下を促進するために、内部排水や余堀を行わない。
  • 自重だけで沈下が困難になった場合は、鋼材やコンクリートブロック、土砂などを載荷して、徐々に沈下させるようにする。

(2) ニューマチックケーソン

掘削深さが大きくなったり、地下水位が高い地盤にケーソンを施工すると、掘削面に水が湧出し、量が多いと施工が困難になる場合がある。その場合、地下水圧相当の圧力を有する圧縮空気を作業室に送りこんで、地下水を排除すると、地上と同様の環境で施工する事が出来る。

こうした圧縮空気の中で行う作業を、一般に高気圧作業と言う。 この方法(圧気工法)で行うケーソン工法がニューマチックケーソン(Pneumatic caisson) 工法で、作業室内を圧縮空気で満たすことから圧気ケーソン工法や潜函工法ともいわれる。


① 施工手順と設備

掘削,沈下と躯体の継ぎ足しを交互に行うことで、構造物は所定の支持地盤に到達する。

支持地盤の確認を行い掘削完了・ 沈下終了を判定したならば、掘削機械や照明装置等を撤去して作業室にコンクリートを充塡して圧縮空気環境での作業は終了する。図3.5.3に、以上の手順を示す。(但し⑨は橋脚施工時の例)

施工設備は動力供給の受電設備、圧縮空気製造のコンプレッサー、作業室への送気装置等、掘削機械、テレビモニター等通信装置、作業室照明等で構成される 。

そのうち, エアーロック(気閘室) は地上の大気環境と作業室の高気圧環境を連絡するために設けた部屋で、ニューマチックケーソン工法特有の設備である 。

エアーロツクは圧縮空気の圧力を調整する2 重扉方式の機構を備えている 。 この部屋には掘削土砂等の搬出に用いるマテリアルロックや作業員昇降に用いるマンロックがある。エアーロックと作業室はシャフト(縦管) で接続されている。
図3.5.3 ニューマチックケーソンの施工手順     

② 施工上の留意点(オープンケーソンの留意点に加えて)
  • 高圧室内作業については、高圧室内作業主任者免許を受けた者から、作業室ごとに作業主任者を選任しなければならない。
  • 気圧が0.1MPa(N/mm)以上の場合は、再圧室を設置しなければならない。
  • 高圧室内作業にかかわる次の業務に労働者を就かせるときは、特別教育を行わなければならない。
    a)作業室及び気閘室への送気を行う空気圧縮機の運転
    b)作業室への送気のための調節バルブ、コックの操作。
    c)気閘室への送気または排気のための調節バルブ、コックの操作。
    d)再圧室(ホスピタルロック)の操作。
    e)高圧室内での業務。
  • やむをえず減圧(作業室の気圧を下げる)により沈設する場合は、作業員を函外部に避難させること。
  • 作業室の気積は、作業員一人について4m以上とすること。
  • 気閘室の床面積は0.3㎡/人以上、気積は0.6m/人以上とする。
  • 作業室内では、内燃機関(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン)を動力とする機械は使用を禁止する。
(3) ケーソン工法の比較

オープンケーソンとニューマチックケーソンは、それぞれ対照的な利点を持っている。施工についての一般的な項目の比較表を表3.5.1に示す。

表3.5.1 オープンケーソンとニューマチックケーソンの比較表
項目 オープンケーソン ニューマチックケーソン
周辺地盤への影響 地下水位の低下を呼び、外山をよび易く、地盤を緩めることが多い。 地下水位の低下などがなく、周辺地盤を緩めることが少ない。
施工深さ 周辺摩擦を減殺できると、相当の深さまで施工可能、-60mぐらいの例あり。 高圧作業になり、労務管理から、施工深さは地下水位下30mが限度である。
地盤の確認 水中作業になる事が多く確認困難。 作業室に作業員が下りるので、確認容易。
機械設備 比較的簡単で工費割安。 送気設備を含めて機械電気設備が大がかり。したがって工費割高。
工期(障害物除去) 沈下途中に障害物が出ると除去に手間取り、工期が不安定。 障害物の除去が容易、しかも沈下が計画的にできて工期が安定。
環境対策 騒音、震動源をもたず、地盤への影響が少ないので市街地施工に適する。 コンプレッサーの騒音・振動、エアロックからの排気音が問題になる。
工期の確実性 一般に水中掘削作業になるため手打繰り作業になり確実性に乏しい。重要な構造物では沈下完了後止水し、コンクリート打設が考慮される。 作業室内は排水しての作業になり、確実性が高い。長大橋の基礎に多数使用されている実績は注目に値する。


(4) 参考

  • このサイトに紹介しているのはニューマチックケーソンの現場である。近年は、高圧気下の作業による能率低下と健康障害に配慮して、このようにロボットによる無人施工が行われている。
  • 出題頻度は余り多くはないので、基本的な施工法と両工法の比較をしっかり覚えることが望まれる。
  • 圧気作業については、安全管理において、酸素欠乏危険作業と高圧室内作業についての規則を身につけることが良い。
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図・表・写真の出典 
図3.5.1  「土木工法事典 改訂Ⅴ」 227ページ 図3.3.3 2001年 産業調査会事典出版センター
図3.5.2  「土木工法事典 改訂Ⅴ」 227ページ 図3.3.4 2001年 産業調査会事典出版センター
図3.5.3  「土木工法事典 改訂Ⅴ」 234ページ 図3.3.15 2001年 産業調査会事典出版センター              
表3.5.1  「土木施工管理技術者指定技術講習用テキスト CPDSⅢ一般土木工学編改訂第1版」105ページ 表3.1.2 平成21年 (一社)全国土木施工管理技士会連合会

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