土木講座_2級土木合格を超えて 

第1部 土木一般

第3章 基礎工 

第7節 土留め工

土留め工は、地盤を掘削したとき地山が崩壊しないように設ける仮設構造物である。地下構造物の開削工法に分類されることもあるが、多くの受験参考書では基礎工の箇所にあるので、便宜上基礎工の章に含める。

土留め工は「土止め工」とも書くが、土木学会の「トンネル標準仕方書 開削工法編」では「土留め工」となっているから、ここではこの用語を用いる。
検定試験では、両方の表記が出題されることがあるから、実務的にはどちらでも良いのかもしれない。受験参考書などでは「土止め」になっているものもある。

ちなみに、建築では「山留め」というし、掘削のことを「根切り」と呼んでいる。同じ事を表現するのにいろいろな用語があるのは、まだ土木・建築が経験重視の世界から科学の世界に入り切れていない事を表しているのかもしれない。


(1)土留め工の構造

土木学会の「トンネル標準仕方書 開削工法編」に従って土留め工の構造を示せば図3.7.1のようになる。検定試験での出題は「自立式」「切りばり式」「グラウンドアンカー式」にほぼ限られ、その中でも「切りばり式」に関するものが多い。参考のためそのまま引用した。

構造の特徴欄をよく読んで図と共に理解する事が大事で、出題もここからが多い。

 
図3.7.1 土留め工の構造


(2) 土留め工の種類(材料による分類)

土留め工の種類は、通常、土留め壁を構成する材料によって分類される。図3.7.2は、これも土木学会の「トンネル標準仕方書 開削工法編」よりの引用であるが、このうち検定試験で出題の多いのは「親杭横矢板」「鋼矢板」「鋼管矢板」「地下連続壁(地中連続壁)」である。

土留め壁の構造についても、特徴の欄をよく理解することが重要である。

また、特徴で良く出題されるのは、各壁の剛性の大きさの順序あるいは水密性の順序である。
試験の出題では、剛性の大きな順序として、 地下連続壁(地中連続壁)>鋼管矢板>鋼矢板>親杭横矢板 と記憶すれば良い。鋼矢板はたわみ性、親杭横矢板は剛性なしとして扱われている。

水密性は、これも、地下連続壁(地中連続壁)>鋼管矢板>鋼矢板>親杭横矢板 の順であるが、親杭横矢板のみ水密性無しとされる。


図3.7.2 土留め工の種類    

(3) 親杭横矢板と鋼矢板の施工

親杭横矢板工は、H形鋼などの親杭を飛び飛びに打ち込み、掘削しながらその間を木矢板で土留めしていく工法である。建築工事の地階や基礎などに多く用いられ、土木工事では地下水の少ない良好な土質で浅い掘削の土留めに用いられる。写真3.7.1はすこしピントが甘いが、人力で矢板をはめ込んでいるところである。

施工上の留意点として、矢板を両側の親杭のフランジに30㎜以上掛ける事、ずり落ちないように抜き板で横矢板をつなぎ止めること、矢板の裏側にしっかりと裏込め土を詰めることなどがある。矢板の厚さはきちんと土圧の計算をして決める。

写真3.7.2は油圧圧入機により鋼矢板を圧入しているところで、右上の小さな写真は打ち込まれた矢板の状況である。
鋼矢板打込は、古くはジーゼルハンマーやバイブロハンマーなどが用いられたが、現在市街地では無振動無騒音工法として、油圧圧入機が用いられている。(これらの打設機械については「第3節 既製杭基礎」を参照のこと。)

写真3.7.1 親杭横矢板工  写真3.7.2 鋼矢板工(写真3.3.2と同じ)


(4) 鋼管矢板の施工

施工方法は前回の鋼管矢板基礎と同じであるから省略する。

(5) 地下連続壁(地中連続壁)の施工

地下連続壁は、基礎工の他深い大規模な土留めに用いられる。基本的な原理は安定液によって地山の崩壊を防ぎつつ掘削し、鉄筋かごを建て込んで水中コンクリートを打設する、こちらで勉強したアースドリル工法と同じである。

特徴としては、最初にガイドウオールと呼ばれる定規を壁厚に余裕を見込んだ幅に築造し、その中を掘削するので、これが地中壁施工機械の重量や走行で動かないよう、強固に築造することが必要である。

図3.7.3は基礎としての地下連続壁の施工順序である。また、写真3.7.3は、大規模な下水道ポンプ場になるシールド機発進用立坑に地下連続壁を適用している現場の施工中の状況である。クレーンでつり下げているのは、ひとつのエレメントに使用する鉄筋かごである。

図3.7.3 地下連続壁基礎の施工順序 写真3.7.3 地下連続壁の現場


(6) 土留め支保工

図3.7.1における支保形式で、実際にも多く使用されるのは、「切りばり式」と「グラウンドアンカー式」であるが、検定試験に良く出題されるのは「切りばり式」である。初学者は、図3.7.4の各部分の名称及び役割(ここには掲げないので各自参考書等で学習すること)を記憶する必要がある。

     
  図3.7.4 土留め支保工の組立例  

なお、土留め支保工による開削工事において、掘削底面の安定は重要である。図3.7.5は、掘削底面の破壊現象についての説明である。二級土木の段階では、その詳しい理論については出題されないが、ヒービングとボイリングの違い(地盤の土質、地下水位などの条件を含む)については良く出題されるので注意が必要である。

   
  図3.7.5 掘削底面の破壊現象  


土留め支保工につては、「労働安全衛生規則」に詳細な規定があるが、そればかりでなく「道路土工-仮設構造物工指針」(日本道路協会)などに技術基準が定められているから参照すること。

また、「建設工事公衆災害防止対策要綱(土木工事編)」では、「労働安全衛生規則」356条の規定にかかわらず「土質に見合った勾配を確保出来る場合を除いて、土留め工を必要とする掘削深さは、1.5mを越える場合」としていて、「土木工事安全施工技術指針」も同様となっている。この点を遵守しないで工事を行った掘削側面崩壊事故は多発している(とくに小規模な下水道や水道の管渠敷設)。施工に当たっての重要な留意点である。

本節では、最近広く使用されている「簡易土留め」については全くふれていない。その理由は、検定試験に出題されていないことと、地下水のある地盤に対処が出来ない事から、性質上は「親杭横矢板工法」に準じると判断したからで他意は無い。「簡易土留め」の施工例写真を写真3.7.4と3.7.5に示して参考とする。

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写真3.7.4 簡易土留め   写真3.7.5 簡易土留めによる下水管配管 
                             
図・表・写真の出典 
図3.7.1  「2006年制定 トンネル標準示方書 開削工法・同解説」142ページ 解説 表3.8 2006年 公益社団法人土木学会
図3.7.2  「2006年制定 トンネル標準示方書 開削工法・同解説」143ページ 解説 表3.9 2006年 公益社団法人土木学会
図3.7.3  「土木工法事典 改訂Ⅴ」269ページ 図3.5.3 2001年 産業調査会事典出版センター
図3.7.4  「2006年制定 トンネル標準示方書 開削工法・同解説」212ページ 解説 図4.10 2006年 公益社団法人土木学会
図3.7.5  「2006年制定 トンネル標準示方書 開削工法・同解説」146ページ 解説 表3.11 2006年 公益社団法人土木学会
写真3.7.1~3.7.5  撮影筆者

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