土木講座_2級土木合格を超えて 

第2部 専門土木

第4章 コンクリート構造物 

第1節 概要

コンクリート構造物の出題内容は、第1部第2章のコンクリート工と重なる部分が多いから、コンクリートの材料や性質については本章では省略する。

また、コンクリート構造物という範疇には、鉄筋の入らない無筋コンクリートもあるのだが、ほとんど出題されていないうえに、現場でも滅多にお目にかかれない。構造物として重要なものはやはり鉄筋コンクリートであるから、本章では鉄筋コンクリートのみを扱う。(2016.01.23追記。ダムコンクリートは無筋コンクリートであるが、本項では考えない。ダムの項で触れる予定である。)

さらに、過去の出題傾向を見るとほとんどが耐久性や水密性についての設問である。次章の鋼構造物とともに3問出題されるのが通例で、そのうち1問が本章にあたる。したがって、本章では、その項目に絞って述べる。


第2節 コンクリート構造物としての擁壁

コンクリート構造物については、過去に1度、擁壁の種類についての出題があった(平成16年度No.14)。影絵のような擁壁断面の形状から、その名称を問うものであったが、近年はこうした出題は見られない。しかし、擁壁自体は重要な構造物であるから、その形式と特徴などの一覧を掲げておく。この中には、たとえば「補強土擁壁」などのように鉄筋コンクリート構造物ではないものも含むから注意を要する。(擁壁については第1章第4節を参照のこと)

図4.2.1 擁壁の形式

なお図4.2.1は「道路土工-擁壁工指針」(公益社団法人日本道路協会)平成11年度版からの引用であり、現行の平成24年度版では図のみになっていて「一般的な適用高さ」「特徴」「採用上の留意点」の欄はない。しかし、初学者には説明があった方がよいと考えてあえて旧版から引用した。



第3節 コンクリート構造物の耐久性

(1) 劣化作用の概要

コンクリート構造物(先に述べたようにここでは鉄筋コンクリート構造物の意味である)は、その性能を構造物の耐用期間にわたって保持しなければならない。

コンクリート構造物は自然や人工の環境中で、 凍結融解の繰返し、 乾湿の繰返し、 中性化などの気象作用や、 海水、 化学薬品、 電流の作用などの影響を受けて、 その機能を損なうことがある。 そのため、 コンクリート自体の劣化や、 コンクリート中の鉄筋などが腐食することによって構造物の耐久性が低下する。

その主なものを説明する。これらは2級試験の範囲を少し超えているが、コンクリートにとっては重要な事項であるから、設計時の配慮も含めて述べる。

 1) 海水の作用による劣化と防止対策

海洋環境にさらされる構造物は海水(一般に塩水)の作用を受け、 とくに飛沫帯では、 潮の干満、しぶきによる乾湿の繰返しを受け、 コンクリート中の鋼材腐食、 凍害、 化学的侵食などを生じやすい。 陸上や海上の大気中でも、 波浪や潮風の作用を受ける。

海洋コンクリート構造物に使用する材料は、 海水の作用に対して耐久性を有し、 かつ、 強度及び水密性の大きいコンクリートができるような配慮が必要である。

材料・配合に関して
  • 海水作用に対し、 抵抗性のあるセメントを使用する。
  • 良質の骨材、混和材料を使用する。
  • 腐食しにくい鉄筋を使用する。
  • 水セメント比を小さく、単位セメント量を多くする。
  • 適切な空気量とする。
設計・施工に関して  
  • 適切なかぶりを確保する。
  • 打継目をできるだけ作らない。
  • 十分な養生を行う。

 2) 塩化物イオンによる劣化と防止対策

材料のうち細骨材に海砂を使用すると、海砂中のNaClやMgClなどの塩化物によりコンクリート中の鋼材の腐食が促進され、 コンクリート構造物が劣化する。
そのため、 海砂中の塩化物量の規制が行われてきた。 しかし、 近年、 沿岸地域のコンクリート構造物の劣化事例が多く報告され、 これらのほとんどが塩化物による被害であることが明らかとなった。 土木学会コンクリート示方書では、 塩化物イオン量は鋼材腐食に及ぼす影響が大きく、 特に塩化物イオン量が多く混入する可能性が高い海砂を使用する場合は塩化物イオン量の受入れ検査は2回/日としている。

レディーミクストコンクリートの塩化物イオン量の受入れ検査は、 荷卸し時に行い、 その他の場合1回/週で原則として0.30kg/m3以下としている。 (ただし、購入者の承認を受けた場合は0.60kg/m3以下にできる。)

プレストレストコンクリートの場合、 一般に鋼材を保護する性能は、 練混ぜ時にPCグラウト中に含まれる塩化物イオンの総量で設定するものとし、 その総量は、 セメント質量の0.08%以下としなければならないとしている。

 3) 凍結融解作用による劣化と防止対策
コンクリートが凍結すると、 コンクリート中の水が凍結し、 膨張による体積増大が圧力となってコンクリート組織に微細なひび割れを発生させる。 凍結と融解が繰返されると、 そのひび割れは次第に大きくなり、 ついにはコンクリートを破壊する。

この凍結融解に対する抵抗性を増大させるには、 水セメント比が小さく、 緻密なコンクリートをつくる。 また、 AE剤によって空気量を増すと、 微細な独立気泡の氷圧緩和作用によって凍結融解作用に対する抵抗性が向上する。

 4) 中性化による劣化と防止対策
コンクリートは、 空気中の炭酸ガスに触れると、 徐々に水酸化カルシウムから炭酸カルシウムに変質する。 ( Ca(OH)+CO→CaCO+HO)
この反応は、 コンクリートのアルカリ性を減少させ(中性化に導き)、 コンクリート中の鉄筋をさびやすい状態とする。 中性化は、 COの存在で時間の経過に伴ない表面から内部に進行していく。

コンクリートが中性化する主な要因は、 水セメント比と環境条件で、 水セメント比が大きい程、 乾燥条件におかれるほど、 空気中の炭酸ガスの濃度が高いほど、 また、 温度が高いほど中性化は速くなる。 したがって、 中性化に対する抵抗性を向上させるには、 水セメント比の小さいコンクリートとするか、 かぶり厚さを大きくするとよい。

 5) アルカリ骨材反応による劣化と防止対策
アルカリ骨材反応とは、コンクリート中のナトリウム・カリウムなどのアルカリ金属イオンが、骨材中の特定の鉱物と反応して異常膨張を起こし、コンクリートにひび割れを生じさせることをいう。この反応は以下の3つに分類されている。 
  • アルカリシリカ反応 (ASR)
  • アルカリ炭酸塩反応
  • アルカリシリケート反応
アルカリシリカ反応・アルカリシリケート反応はほぼ同じであるため、コンクリート標準示方書では、アルカリシリカ反応 (ASR) ・アルカリ炭酸塩反応の2種類に分類されている。また、日本でもっとも多く発生しているのが アルカリシリカ反応で、アルカリイオン・水酸基イオンと骨材中に含まれる準安定なシリカとの間に生じる化学反応である。これらのことから、一般にアルカリ骨材反応のことをASRと呼ぶことがある。

アルカリ骨材反応によるコンクリート構造物の劣化現象は古くから知られており、 1930年代に米国で初めて注目され、 1940年にはこの現象が高アルカリ性のセメントと骨材の化学反応によるものであることが報告された。
我が国においては、 一部報告があるもののその被害例は少なかったが、 1980年代に入って関西地方を中心にその被害が顕在化した。 アルカリ骨材反応は、 高いアルカリと水分が必須であり、 かつ40℃程度の温度でとくに膨張反応が促進されることから、 高温多湿の夏期に反応が進み、 外部から雨などの水分の供給が多い土木構造物にその被害が多い。

アルカリ骨材反応を抑制するには、 以下のいずれかの対策を行う。
  • 安全と認められる骨材の使用
  • 低アルカリ形セメントの使用
  • 抑制効果のある混合セメント等の使用
  • ンクリート中のアルカリ総量の抑制
なお、 海水または潮風の影響を著しく受ける海岸付近において、 いずれかの対策をとる場合でも、 アルカリ骨材反応による損傷が構造物の安全性に重大な影響を及ぼすと考えられる場合には、 塩分の浸透を防止するための塗装等の措置を講ずることが望ましいとされる。


(2) 耐久性の照査

耐久性を阻害する要因は多種多様であって、そのことから、構造物については次の事項を照査して確認する必要がある。
  1. 中性化に関する照査
  2. 塩化物による鋼材腐食に関する照査
  3. 凍結融解作用に関する照査
  4. 化学的浸食に関する照査
  5. アルカリ骨材反応に関する照査
  6. 水密性に関する照査
  7. 耐火性の照査
なお、上記以外に耐震性の照査も重要であるが、2級試験ではその範囲を超えるからであろうか、他の項目も含めて地震については出題を見ないので省略する。


(3) 初期ひび割れ

冒頭に述べたように、本項の出題傾向を見ると、コンクリート構造物の耐久性に関する設問がほとんどで、その重要性は変わらないから、今後もこの傾向は続くと考えられる。従って、ここまでの内容をよく理解すれば十分な対策となると思われる。

しかし、実地試験を見ると、コンクリートの施工に関して、コンクリート打設直後のいわゆる初期欠陥に関する設問も散見される。以下、その中での初期ひび割れについて、簡単に述べておく。

厚い底板などでの、施工時にセメントの水和反応による発熱量が大きく、構造体が大気温度に戻る過程でコンクリートに引っ張り応力が発生し、ひび割れを生ずることがある。このような温度ひび割れに対しては、次のような方法をとって発生を制御する。
  1. ひび割れ限界値を設定する。
  2. 構造物の形状寸法やコンクリートの配合を設定する。
  3. コンクリート材料の熱特性や力学的特性(物性)を設定する。
  4. 温度解析により構造物の温度分布を算定する。
  5. 応力解析により構造物の応力分布を知る。
  6. ひび割れ指数を算定する。
  7. 予測値が限界値範囲内にあるかどうかを検証する。
なお、ここで用いられるひび割れ指数は次の式による。

              ひび割れ指数=(コンクリートの引っ張り強度)÷(コンクリート構造物に発生する主引っ張り応力度)

また、温度解析や応力解析には、有限要素法による算定のできるソフトウエアが多く開発されていて一般的に使用されている。

図4.3.1に最大ひび割れ幅とひび割れ指数との関係を示す。


図4.3.1 最大ひび割れ幅とひび割れ指数との関係    

そのほか、本項の過去の出題には、プレストレストコンクリートやコンクリート橋梁の施工に関するものがあるが、先に述べたように近年では出題されていない。余力のある方は、適当な参考書で参照するとよい。



                             
図・表・写真の出典 
図4.2.1  「道路土工-擁壁工指針」11~12ページ 表1-1 平成11年3月(旧版) 社団法人日本道路協会
図4.3.1  「2012年制定 コンクリート標準示方書 設計編 306ページ 2013年 公益社団法人土木学会

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