標準貫入試験

「土木講座」に連動して、少し詳しい解説記事を補足として掲載する。

標準貫入試験はJIS A 1219:2001に定められている試験方法で行う、地盤の原位置試験であって、世界各国で同じような原理に基づいて試験が行われているとされている。
JISには以下のようにある。
 

日本工業規格 標準貫入試験方法(JIS A 1219:2001)抜粋

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  1. 適用範囲
    この規格は,標準貫入試験装置を用いて,原位置における地盤の硬軟,締まり具合又は土層の構成を判定するためのN値を求めるとともに,試料を採取する貫入試験方法について規定する.
  2. 引用規格(略)
  3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次による.
    a)N値 質量63.5±0.5 Kgのドライブハンマーを76±1 p自由落下させて,ボーリングロッド頭部に取り付けたノッキングブロックを打撃し,ボーリングロッド先端に取り付けた標準貫入試験用サンプラーを地盤に 30 p打ち込むのに要する打撃回数.
    b)自沈 ドライブハンマーの落下を伴わずに,ボーリングロッド若しくはドライブハンマーの自重のみで,標準貫入試験用サンプラーが貫入すること.自沈には,所定の深さに標準貫入試験用サンプラーを降ろした状態で貫入するロッド自沈,ドライブハンマーをノッキングブロックに静かに載せた状態で貫入するハンマー自沈がある.

    c)貫入不能 予備打ち及び本打ちにおいて,50回の打撃に対して累計貫入量が 1 p未満の場合.

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上の試験方法と、図及び写真をあわせてみると良く理解ができる。

  標準観入試験装置及び器具の名称       

この試験はテルツァギ−ペックの著書(私が確認したのは「新版テルツァギ・ペック土質力学 応用編」丸善株式会社 昭和45年1月24日.旧版は未見.日本語旧版は昭和30年発行)によって紹介され、一躍実務家の受け入れるところとなったのだという。
日本では特に過信というほど偏重され、ほとんどの設計に使用する定数がこの試験によって得られるN値から導き出されるようになっている。砂の内部摩擦角φをN値から導く式などがポピュラーである。ほかには、粘着力Cなども同様で、耐震設計に結びつく地盤の液状化判定などにも盛んに使われている。
その普及の理由はなんと言っても
@有用性(一度の試験で、資料が採取でき,相対密度も判明する)
A実用性(簡単な機械と簡単な操作)

にあると言える。
しかし、この利便性の陰で、以下のような点が指摘されていたのもまた事実である。

  1. 人力操作主体の手動落下法では、非科学的な(いい加減な)値しか出ない。
  2. 記録なども、チョークでの無造作な印付けと記憶によるため精確さを欠く。
  3. 使用機材の規格仕様・許容誤差の曖昧さがある。

品質重視の時代に、このような試験が行われ、しかも、構造物構築のもっとも基礎的なデータがこれによって与えられていることには、業界人ならいざ知らず、一般の理解を得られるわけはないと言うのが批判する人々の意見であった。
1961年に最初の規格化が行われてから、こうした批判に答えるべく、いろいろな動きがあったが、普及の速度と前記の理由には勝てず、1995年の改訂でも単位系(SI)の手直しにとどまっていた。
2001年、ようやく地盤工学会での検討をもとに改訂されたが、自動化と手動を併記した、あまり革新的でないもの(私見)になった。こうした規格は、いきなりガラッと変えてしまうことは不可能で、過去との連続性をたもったままいかにに移行するかが重要なのであろう。
大きく変更された点は、前記引用の太字部分である。
旧規格 63.5 Kg → 新規格 63.5±0.5 Kg
落下高 75 p  → 新規格 76±1 p 
(一級二級土木施工管理技士や、RCCM、技術士試験の基礎知識を試す問題に出そうである)
また、いくつかの用語も改められています.
旧規格 ハンマー → 新規格 ドライブハンマー
旧規格 ノッキングヘッド → 新規格 ノッキングブロック
旧規格 ロッド → 新規格 ボーリングロッド
旧規格 スプリットバレル → 新規格 スプリットバーレル
さらに、自沈に2例、貫入不能定義が新たに入っている。

以上は,「標準貫入試験方法(JIS A 1219:2001)の解説」((社)地盤工学会 平成13年10月)に基づいている。

そのほか、N値については,あまりにも知られすぎて、むしろ間違った理解(?)のほうが流通している場合がある。
まさかきちんと学習した技術者には居ないと思うが、施工現場では時に「N値70回の堅い盤だ」などと、驚愕する言葉を聞くことがある。


筆者が学校を出てこの世界に入った頃は、工事請負者が設計とは独自に土質調査を行うのが普通で、調査現場(とりもなおさずそこが現場になる。事務所も何もない。)に何日も派遣されて調査業者のボーリングを監督したものである。監督と言っても、 たとえば
自由落下時に本当に自由落下させているか、検尺をいい加減にしていないかなどを監視しているだけで、それ以外は調査職人から学ぶことが多かった。写真のようなボーリング機械は、今でも使用されているが、昨今ではどうなっているのだろうか。 

  出典
写真   筆者撮影
 図  「標準貫入試験方法(JIS A 1219:2001)の解説」((社)地盤工学会

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