国土地理院(地図と測量の科学館)

土木には測量が付き物です。もちろん建築工事でも測量は必須ですが、土木は、土地すなわち地球に密接にかかわっているため、より重要な役目を持っています。地球上の自然物、人工物の相対的位置を正確に決定することが測量の役目ですから、土木の実地学科教育はまず測量学と測量実習から始まります。現場に出ても、毎日測量で走り回ることが多いものです。もっとも、最近では測量は測量専門会社に任せていることが多くなっていると聞きます。現場所長さんでも測量を知らない人が出てきていると、「日経コンストラクション」に記事が出たこともあるくらいです。

公共測量に従事するには、測量士、測量士補の資格が必要ですが、現場の日常の測量(工事目的物の位置を現地に設置したり、計画高さを知るための施設を組み立てたりする)については、特に資格は要りません。しかし、資格とは別に、測量の腕は磨いておく必要があります。
測量は、今ではコンピュータ付きのトータルステーションなどが登場し、GPSを利用して、一昔前とは比べ物にならないくらい簡単で正確に行えるようになりましたが、それでも熟練した人とそうでない人では、その正確さにも差が出ます。

測量は、地図を作成するために発達し、土木もずっと以前はそうであったように、軍事目的のためでした。そのため、どこの国でも国が管理することから始まりました。最近の新聞記事に、測量した結果である地図に、テロリストの目標になりそうなもの、例えば原子力発電所、軍の基地などを正確に載せることへの議論が始まっているとありました。わが国では、現在でこそ地図は正確に地物を表現していると言って差し支えないようですが、第二次大戦以前は、やはり重要な施設はさりげなく隠されていました。(「地図に訊け!」山岡光治著 ちくま新書 28ページにその例があります)

この、測量が国家管理であること自体は現在でもその通りで、その部署が国土交通省国土地理院です。

国土地理院は茨城県つくば市にあります。ここには、非常に興味をひかれる施設が2ヶ所あり、地理的に近いこともあって私はよく行きます。私は測量士の資格を所持していて、測量士補の講座などもやっていますが、そのための用事より歴史を勉強するためなので、この欄には少し違和感があるような文章になりそうなのですが、ともかくご紹介したいと思います。(詳しい場所や、交通などは上のリンクをたどって国土地理院のサイトをご覧ください)

写真1 つくば駅

写真2 研究学園駅 

写真1は、最寄駅「つくば」(つくばエクスプレス)です。地下駅なので遠くの横断歩道橋両側に出入り口があります。自家用車やバスで行くのであればこの駅が便利ですが、距離はその一つ手前「研究学園」(同)が近いようです。最も写真2のその駅は、周囲がまだ開発中です。
今回は、写真1から徒歩で出発し、約1時間かけて国道408号沿いにある国土地理院に到着、本欄記事の写真をとったり、後でご紹介する「情報サービス館」で旧版地図の謄本を購入したり、「地図と測量の科学館」特別展を見学したりしたあと、今度は写真2までまた45分徒歩での大旅行でした。

写真3 国道408 写真4 巨大なアンテナ

国道408の筑波大学病院(写真3右側)を過ぎてしばらく行くと、進行方向右前方に写真4のような巨大なアンテナが見えてきます。これが国土地理院(写真5)です。

写真5 国土地理院 写真6 地図と測量の科学館

正門の右側にもう一つの表示があって(写真6)、この写真の左奥に見える建物が「地図と測量の科学館」です。このリンク先サイトでは詳しい紹介がなされていないのが残念です。博物館ですから、写真撮影はできず、私も内部の紹介はできません。筑波山がすぐ近くですから、ぜひ皆さんお出かけになって、実際に展示をご覧ください。測量と地図のことがよくわかります。
この日は特別展として「企画展 筑波山とつくば道」が行われていました。筑波山神社所蔵狩野探幽筆の「三十六歌仙絵額」の34枚が圧巻でしたが、これは土木とはかなり縁遠いので省略します。(この展示は2008年5月11日まで行われています)

写真7 周辺案内図 写真8 外部施設その1

さて、内部はともかく、写真7のように(小さくてごめんなさい。図の左下が「地図と測量の科学館」です)広大な面積ですから、外部にも見学できる施設がかなりあります。写真8は、左手の建物が「地図と測量の科学館」喫茶室と売店(測量と地図に関する本がそろっています)です。点々と見えるものは、三角点や水準点の形式を表した展示です。
少し数が多いので抜粋して掲載します。どのようなものがあるかご覧ください。新旧ありますから、現在ではもう使われていないかもしれません。

写真9 標石等の展示その1

説明板がありますが、写真ではよく読めないおそれがありますので要約します。(以下【 】内は同)

【三角点は、山の頂上付近や見晴らしのよいところに設置され、地球上の位置(経度、縛度)が正確に求められています。地図の作成はもちろんのこと、道路の建設、都市の開発等の測量にはなくてはならないものです。
三角点には、一・二・三・四等三角点標石、一・二・三・四等三角点金属標があります。
標石は柱石と盤石とで構成され、柱石は盤石の上に設置されています。
一等三角点を除く三角点、水準点の多くの標石は、小豆島産の花崗岩岩が使用されています。】

先の「地図に訊け!」48ページに、この小豆島産の花崗岩について、秘話が載っています。旧陸軍幹部に岡崎に関係するものがいて、そのためかある時期小豆島産と並んで岡崎産の花崗岩が使われたといいます。なぜか短期間で終わったというのですが。
写真10 標石等の展示その2 

同様に
【水準点は、全国の主な国道または主要地方道に約2kmごとに設置してあります。土地の上下変動は、水準点の測量を繰り返すことによって求められます。(地殻活動、地盤沈下等)
水準点には、基準水準点・一等水準点・一等水準交差点・二等水準点標石、一・ニ・三等水準点金属標等があります。】

写真10右の「不号水準点標石」というのは、次のように説明されています。
【内務省地理寮は1876年(明治9年)、東京(霊岸島)から塩釜(宮城県塩釜市)まで水準測量を実施しました。この事業には、イギリス人測量技師などの指導のもとに実施されたことから、水準点にはイギリスで使用(現存している)されている、「不」の字に似ている記号が採用されました。これを几(き)号水準点と呼んでいます。
この記号は、建物、鳥居などの構造物に彫刻したものと、適当な構造物がない場合は、標石に「不」の字を付して設置しました。
水準測量の際は、不の字の構棒の溝に金属板をはめ込み、これを固定して標尺を載せて行われました。
構造物に彫刻されたものが、関東、東北地方で数多く発見されています。】

写真をよく見ると、確かに「不」に見えます。しかし、今測量を学んでいる方などには、平板測量器を横から見たような印象です。
写真11 標石等の展示その2 

そのほか多くの標石の展示があります。写真11左については、【展示の「内務省地理局測点」は、測量標が近くに設置(地下に設置)されていることを示す、
表示標の役割を果たしていたと思われます。】とあります。そのほかいろいろな説明がありますが省略します。
写真12 現代の測量標 

現代では、写真12のような基準点が使用されています。これを、「電子基準点」といい、カー・ナビゲーションで身近なGPS測量に使用されています。
説明板には以下のようにあります。

【この施設は、電子基準点といいます。先端部には、GPS衛星からの電波信号を受信するアンテナが取り付けられており、柱の中にはGPS受信機と受信したデータを転送するための装置が入っていて、24時間の連続観測が行われています。GPS(Global Positioning System)は米国で開発された位置を求めるシステムで、上空およそ2万kmを飛行しているGPS衛星から出された電波信号を受信し、GPS衛星とアンテナとの間の距離を計算することにより電子基準点の位i畳を正確に求めることができます。この電子基準点で受信したデータは、国土地理院の宇宙測地館にあるGPS中央局へ専用回線で送られ、コンピュータで計算処理して最新の位置を正確に求め、土地の測量や地図作成の基準点として利用されています。また、最新の位置が時々刻々得られることから、地震・火山噴火等の重要な地殻変動の監視を行っています。】

写真13 明治のGPS? 

写真13のような櫓もあります。右の説明写真が小さくて読みにくいかもしれません。ご容赦。

まだまだあります。

空中写真撮影用の航空機も展示されています。普通、航空写真と言いますが、測量では「空中写真」と呼んでいます。 

写真14 空中写真撮影用の航空機 

広場には巨大な地球の模型があります。

【この模型は、高さが約2m、半径約11mの球体に、20万分の1地勢図の画像や同一縮尺に投影した周辺国の海岸線を焼き付けたセラミックプレートを敷き詰め、地球ひろばを中心に半径約2200kmの範囲を示しています。この上に立って見下ろす地図は、縮尺比から、高度約300kmの人工衛星から見下ろした地表に相当します。】

写真14 20万分の1の地球 

そのほかいろいろな施設があります。説明は省略。

写真15 測地観測塔 写真16 重力測定棟

最後に、以下の動画をご覧ください。(動かないときはダブルクリックで動かしてみてください)

これは、最初にご紹介した巨大アンテナで
VLBI (Very Long Baseline Interferometry:超長基線電波干渉法)観測局です。
世界各国と協力してはるか数十億光年の彼方にある電波星(準星)が放射する電波を
このアンテナで受信し、電波の到達時刻の差を精密に計測することで、観測局相互の位置関係、地球の姿勢等を決定し、
 この観測結果に基づき、地球上における我が国の位置を求め、その変化を監視しているのだそうです。
詳しくは、国土地理院のVLBIサイトをご覧ください。

 

 
身近な土木INDEXに戻る