橋梁見学会報告

今回は、ある研究会の見学会に参加しましたので、そのご紹介です。

日本の道路施設(トンネルや橋梁など)は、戦後の高度成長期に一斉に整備されたことで、その高齢化も一斉にやってきます。そのため、現状をよく点検して、補修によって寿命が延ばせるものは延ばし、同時期に更新が集中しないようにする方策がとられようとしています。(現状などの資料は、たとえば国土交通省のこちらをご覧ください

この研究会(私も会員です)は、そうしたメンテナンス技術を研究するものですが、その一助として、実際の道路施設(橋梁)の見学会が行われました。実物を見れば、何か良い知恵が浮かぶかもしれないと言うわけです。

見学した橋梁は、PC連続桁橋、鋼複合橋、鋼板桁橋の3橋です。(以下、具体的な地名や橋梁名は省略し、時系列をすこし変更しての報告になります。あまり「身近」でない専門的すぎる事項は省きます)

鋼複合橋を背景に開始の説明 PC連続桁橋路面
写真1 鋼複合橋を背景に開始の説明 写真2 PC連続桁橋路面

写真1の背景に見える橋梁はあとで説明します。最初は写真2のPC連続桁橋です。この3橋は連続しており、この橋梁から下って鋼複合橋で河川を横断し、鋼板桁橋で対岸にとりつきます。

路面の状況 伸縮継ぎ手
写真3 路面の状況 写真4 伸縮継ぎ手

橋梁の点検は、目視による全体像をつかむことから開始されるとのことです。写真3のような路面の損傷があれば、ほぼ間違いなく橋梁本体まで水が浸透していると判断されます。また、写真4のような伸縮継ぎ手における段差の有無、写真2に見える高欄の通りのたるみなどをみて全体状況を把握します。
排水溝が詰まっていないかどうかも大切な点検項目であるとのことです。

伸縮継ぎ手などは、車両の通行時の音でも判断します。ある自治体では、郵便局と契約し、毎日の郵便配達バイクの通過音を聞いてもらい、異常な音になったら通報してもらうなどの日常点検方法をとっている例もあるとのことでした。

次は、橋梁下についてです。ここは、陸橋なので、下から見上げることが出来ます。

下面(現場施工部分) 下面(工場製作部分)
写真5 下面(現場施工部分) 写真6 下面(工場製作部分)

写真5は、陸橋下を通る道路上の部分で、スパンが大きいため現場で製作し架設したものだそうです。ちょうどこの様な施工法(こちらは工場製作ですから、架設方法だけ同じ)であったのでしょう。写真6は、道路以外の部分(手前)と写真5の部分を見通したものです。こちらはスパンが小さいので工場製作とのことでした。

橋脚部分にある四角いものは、落橋防止装置で、震災対策です。これについてはこちらの写真@、Aでも紹介しています。現在では主な橋梁での対策は終わったようで、今回の3橋梁でもすべてに見えます。

さて、ここでは興味のあるデモを見せていただきました。両者共、特に橋梁のみが対象ではありませんが、予防保全のための点検用機器としての使用が出来るものです。

ひび割れ幅が計測できるトータルステーションのデモ 非破壊鉄筋探査機1 非破壊鉄筋探査機2
写真7 ひび割れ幅が計測できるトータルステーションのデモ 写真8 非破壊鉄筋探査機1 写真9 非破壊鉄筋探査機2

写真7は、ノンプリズムトータルステーションを用いたひび割れ幅・ひび割れ形状のデータ化システムのデモの様子です。ひび割れ幅と位置座標を、ノンプリズムトータルステーションにクラックスケールを内蔵し、ひび割れの幅と位置を計測でき、その計測データは、専用の解析ソフトとCADを使用することにより、自動的にパソコン内に展開することができるということです。

写真8と9は、既設構造物中の鉄筋配置を電磁波レーダーによって破壊せずに画面で見ることの出来る機械です。写真8は、その画面で、少し見にくいですが白い波の山が鉄筋だそうです。写真9は、電磁波のセンサ部分で、知りたい部分にこのセンサを持って行き動かします。

2橋目は鋼複合橋で、河川上の3スパンはトラス橋です。

鋼複合橋 歩車道分離の様子
写真10 鋼複合橋 写真11 歩車道分離の様子

写真10はほぼ全体の様子です。下部工のうち河川部はケーソンによって橋脚基礎が施工されたものです。上部工の内トラス部分は車道のみで、歩道部は外に張り出した様な感じを受けますが、断面図を見ると、桁が4本あり、歩車道ともその上に載っています。

リベット接合 トラス橋部分の下面
写真12 リベット接合 写真13 トラス橋部分の下面

トラスの部分は、リベット接合とボルト接合が混在しています。前者は工場で、後者は現場で施工されたものと言うことです。もう一つ現場溶接という方法もありますが、品質管理が難しい(風による温度管理など)ため、あまり用いられません。
写真12のリベットはかなり錆が発生しているようです。この部分は河川上なので、真下には簡単には行けませんが、陸上部からトラス橋部分の下面を見た様子が写真13です。

落橋防止装置 点検用マンホール
写真14 落橋防止装置 写真15 点検用マンホール

写真14は箱桁橋部分の落橋防止装置です。箱桁は内部の点検用に人間が入るための出入り口があります。写真15がその出入り口です。

以下の3枚の写真は点検とは少し違う話題です。

堤防(写真中央に四角い蓋が見えます) 「建設省」「基準点」と書かれた蓋 2等水準点
写真16 堤防 写真17 基準点マス 写真18 2等水準点

この橋梁の架設された河川堤防に、「建設省」「基準点」と彫り込まれた蓋があります。注意して中を見てみると、二等水準点という金属標が入っています。結構身近にこうした基準点が見つかるものです。私は測量にも興味があるのでこちら(国土地理院)なども訪問しています。また、日本の水準点の元になるところも訪問しています。毎年「測量の日」(6月3日)前後に公開していますから興味のある方は訪問なさってみてはいかがでしょうか。

さて、最後の橋です。これは陸橋で、移設できない道路をボックスカルバートで抱え込み、カルバートの一方を橋台にした構造になっています(写真19)。

橋台兼道路ボックス 桁の様子
写真19 橋台兼道路ボックス 写真20 桁の様子

構造は写真20に見えるように、4本の桁とコンクリート床版の組み合わせになっています。

落橋防止装置とダンパー 雨氷によるコンクリートの変色
写真21 落橋防止装置とダンパー 写真22 雨氷によるコンクリートの変色

この橋にも落橋防止装置がありますが、他の橋と違うところは、橋台と桁がワイヤーで結ばれているところです(写真21)。桁側に三角帽子の様な部分がありますが、この中にはバネが入っていて、振動を吸収してくれるのです。(これは前回の本欄写真16にもあります)

写真22は、本題に戻して点検時の目の付け所の一つだそうです。まず、上方高欄部分の垂直壁のコンクリートと、水平部分のコンクリートの色を比較します。後者は白く、コンクリート本来の色です。これは、雨水の影響を受けないようになっているからです。
しかし、写真中央、ちょうど継ぎ手のところに黒くなった部分が見えます。水が何らかの影響で回り込んだものです。なんと言っても構造物にとって水は大敵ですから、こうして水の影響を受けたところをいち早く発見することが、予防保全のための点検では必要なのだと言うことです。

こうして3橋を、詳しい説明を聞きながらの見学を終えました。説明してくださった担当の方、ありがとうございました。(ただし、本文の中に誤りがあった場合は、橋梁に関する知識が少なく、説明をよく理解できなかった筆者の責任です。)

雑誌「日経コンストラクション」2010年1月22日号でも「特別リポート」として「維持管理の現場からのSOS」という記事があります。「地方自治体が抱えるインフラの荒廃が現実化してきた。財政難に加えて技術者不足に直面し、維持管理の現場からは悲鳴の声が上がる。」とのことです。

事態は、常に思ったより早くやって来るようです。

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