東京湾横断道路

 東京湾横断道路は、今では「東京湾アクアライン」といいます。この東京湾アクアラインは、東京湾の中央部を川崎市から対岸の木更津市までトンネル及び橋梁で渡る15.1kmの自動車専用道路です。最初に調査を始めたのが1966年で、それ以来31年、また1989年工事を始めてから約8年という年月をかけて、1997年(平成9年)1218日に開通しました。
 このアクアラインは、現代土木の最先端の技術を多く採用して建設されましたが、本コラムの趣旨である身近な視点で見る特徴は、船舶が多く航行する川崎側約
10kmが海底トンネルで、木更津側約5kmが橋となっていることです。
 トンネルの中間にトンネル内の空気をきれいにするための換気塔としての役割を持つ風の塔(川崎人工島)とトンネルから橋にかわるところに首都圏では唯一の海上休憩施設となる海ほたる(木更津人工島)の2つの人工島があります。

(写真1:風の塔)

 上の写真はその「風の塔」です。一般の人がこの塔を接近してみることは、なかなか難しいのですが、最近機会がありすぐ脇を船で通過する体験を得ましたので掲載します。

 高いほう(右側)は90m、低いほうは75mの高さがあります。

 左側低いほうの外側面は白1色(高いほうも見えませんが同じです)ですが中央側はストライプになっています。これは、景観検討委員会(換気塔専門部会長:平山郁夫)の結論で次の理由からだということです。(「東京湾横断道路のすべて」137ページ:日経コンストラクションBOOKS

  1. 排気の余りかからない外側の面は視認性の高い白1色にする。
  2. 濃度の高い排気に触れる内側の円筒面は汚れの目立たない群青色と白色のストライプにする。

 2年たった今でも余り汚れは目立っていません。これらの判断が良かったということなのでしょうか。それにしても世界に名高い平山画伯の名を今ごろになって発見するとは、如何に土木の世界を狭く考えてしまっていたか、私の勉強不足が露呈しました。

 (写真2:橋梁部)

 橋を造るのはは土木の仕事ではない(建築屋さんの仕事)と思っていらっしゃる方が多いということを、本四連絡橋の新聞記事などで読んだことがありますが、れきとした土木の仕事です。

 この写真も通常ではなかなか見ることの出来ない橋梁部の下側です。

 橋梁部は、報道などでもトンネル部の泥水シールドの新規さに押されて余り話題になることがなかったと思われるのですが、出来あがってみるとやはり華々しさがあります。
 この部分は、海ほたる(木更津人工島)から
1,000mほど木更津市側の航路部分(4径間)です。ここは航路を含めて10径間連続桁構造(1,630m)で、その他も木更津側から9径間連続(714m)、10径間連続(800m)、11径間連続(910m)と、橋梁部は連続桁構造が最大の特徴です。
 東京湾アクアラインは、通行料の高さで話題を呼び、通行量の少なさで批判を浴びました。巨大プロジェクトには、必ずといって良いほど、無用の長物であるとか、ゼネコンと政治家だけが儲けるとかの批判が付きまといます。
2つの陸をつなぐことは技術者の夢である、そのために橋がありトンネルがある、そうした時代はもう終わりでしょう。
 青函トンネルに限らず、巨大プロジェクトのメンテナンス費用は、膨大なものになることがわかってきました。アクアラインもそうした時期をいつかは迎えます。
 技術者は、ようやく自分の視線をそうした将来まで向けなければならないことに気づきつつあります。

 

 最後に、このプロジェクトでの死亡者は10名です。青函トンネルでの死者は34名です。昔はダム工事など大型工事では何億につきひとりなどと陰で言われた時代もあったそうです。多いとか少ないとかの議論ではないのですが、例えばアメリカ軍の戦争のし方が戦死者ゼロを目指している時代に、労災ゼロは本当に実現できないものなのか、今一度考えてみなければいけないと思います。
 おりしも
OHSAS18001による労働安全衛生マネジメントが、次なるISO化する可能性が高いといわれています。当社でも準備を開始しました。

 

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