ワイヤーロープ式防護柵衝突試験

本欄も今回で58回を数えることになりました。身近なものもあり身近でないものもあり、題名にそぐわない内容では無いかと恐れつつ回だけは重ねました。いつまで続けるかは、開設者にもわからないので、気長にお付き合いください。

道路施設のうち、中央分離帯は、出来れば広く取って片側車線の事故が反対側に及ばない事が望ましいのですが、それにはその分用地幅がかさみます。また、頑丈にすれば、衝突した車輌が破壊されてそのドライバーに危険が及びます。さらに、緊急時に遠く迂回しなければ反対車線に入れない事になってきます。

これらの問題を解決すべく、(独)土木研究所寒地土木研究所・寒地交通チームが、「ワイヤーロープ式防護柵」の開発を行っており、このたびその実車輌による衝突試験が行われました。昨年も行われた様ですが、今回は見学の機会(2011年1月12日及び同18日)に恵まれましたので、その報告をいたします。

実験場は、つくば市にある国土交通省国土技術政策総合研究所内の衝突実験施設です。この研究所は、本欄でもすでに訪問していますように、道路に関するいろいろな実験が出来るコースなどがあります。

国土技術政策総合研究所 衝突実験施設
写真1 国土技術政策総合研究所 写真2 衝突実験施設

写真1は、国土技術政策総合研究所、写真2は、衝突実験施設の入口です。

実験場@ 実験場A
写真3 実験場@ 写真4 実験場A

写真3、は実験場の管理棟でしょうか。実験関係者と報道関係者しか近寄れませんでした。写真4は実験場で、開始前です。

説明を聞く@ 説明を聞くA
写真5 説明を聞く@ 写真6 説明を聞くA

まず、実験全体の説明を聞きます。実験は2回に分かれていて、12日は乗用車の実験、18日は大型トラックの実験です。当日に配布された資料(PDF:135KB)はこちらにあります(連絡先等は消してあります。興味のある方は、本欄冒頭のURLをたどって直接質問してください。本欄は実験主体とは関係のない筆者の私的な感想だけを述べています)。

また、ワイヤーロープ式防護柵の説明は、実験案内にあった説明部分をこちらに掲載しています(PDF:117KB)。要するに、衝突した際、ワイヤーが撓んで衝突車両を柔らかくはじき返し、対向車線に飛び出して対向車と正面衝突したり、運転者に被害を与えたりする事をなくそうという物です。そのはじき返し方が、日本の安全基準に適合するかどうかを試験する訳です。

実験用ワイヤーロープ防護柵 支柱部分
写真7 実験用ワイヤーロープ防護柵 写真8 支柱部分

写真7は、実験用に設置された防護柵です。写真8、支柱部分に見える黒いプラスチック部分には、支柱に切れ目が入っていて、支柱が衝突の衝撃で曲がると、ワイヤーロープだけが外れるようになっています。

写真9 防護柵終端部 ビデオ1 実験その1(乗用車)

写真9は終端部分で、これを緩めることによりロープをたるませ、緊急時に車線がまたげる事になります。では、実験その1、乗用車による衝突実験ビデオをご覧ください。なかなか始まりませんし、筆者が不慣れなため、途中で被写体から外れてしまっています。それでも最後の砂埃までをどうぞ。

衝突車輌前部 衝突車両側部(衝突した側)
写真10 衝突車輌前部 写真11 衝突車両側部(衝突した側)

時速100km、入射角20°で衝突しました。写真12、13は、直後の様子です。衝突した部分はかなり破壊されていますが、内部を見ると、運転者はおそらく大丈夫であったと思わせる状況でした。回転して進行方向逆向きに止まっていますが、対向車線への飛び出しはしませんでしたので、一応の成功かと思います。

破壊された支柱 自動車加速装置(?)
写真12 破壊された支柱 写真13 自動車加速装置(?)

写真12は衝突後の支柱の様子です。よく見ると、写真11に見える車輪の赤と黄の塗料が付いています。なお、言うまでもありませんが、この実験用車両には運転者は乗っていませんから、写真13のような(正式名称は分かりません)装置で、ワイヤーで引き加速させて離します。

大型車用防護柵 実験用大型貨物自動車
写真14 大型車用防護柵 写真15 実験用大型貨物自動車

さて次は大型車両での実験です。大型車両では実験の条件を変えます。入射角は15°になりますから、写真14のようになります。分かりにくいですが、下側に丸い穴が見えます。これが一回目の乗用車の時の柵の支柱穴です。この時の防護柵は、この支柱を遠くの建物の方にまっすぐ伸ばした直線でした。

また、実験に使用する大型貨物車は写真15のようで、かなりの迫力があります。これが時速552kmで衝突するわけです。

大型貨物自動車実験直後
ビデオ2 実験その2(大型貨物車) 写真16 大型貨物自動車実験直後

今度は速度がゆっくりな分よく撮れたと思いますがいかがでしょうか。写真16の直後の様子を見ると、うまくいったようですが・・・。

反対車線に侵入の様子@ 反対車線に侵入の様子A
写真17 反対車線に侵入の様子@ 写真18 反対車線に侵入の様子A

写真17及び18でお分かりのように、ワイヤーロープは完全に止めきれず、大型貨物自動車は反対車線にはみ出していました。ワイヤーロープは切断されませんでしたが。

実験の結果はその場では公表されませんでしたので、なんとも言えません。(独)土木研究所寒地土木研究所・寒地交通チームの結果公表を待ちましょう。

2日とも好天に恵まれて、最高の実験日和でした。18日は前日の大風が嘘のようでした。安全のため、見学場所がかなり遠かったので、それが少々不満ですが、時間もたっぷりとれてせかされることが無く非常に良い経験をしました。(当日の夜、NHK-TVのローカル放送で実験の迫力ある映像が流れました。見学者の中に私の姿はありませんでした)

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