既設埋設物の防護


 前回掲載のシールド工法では、地下を掘り進むため、既設の埋設物、たとえば下水道管やガス管などへの影響はあまりありません。周辺の地盤がゆるむと、時として許容限界以上の変位がおき破損することもありますが、現在のシールド掘進技術では、まず起こらないことと考えられています(もちろんそのためには常時の変位観測がかかせませんが)。
 しかし、立坑部分や、地下鉄の駅部分などは、おおむね地上から掘り下げる開削工法によりますから、もしも用地内に既設の地下埋設物などがあると、事前の処理が必要です。
 事前の処置では、詳しい調査の上位置を確定し、管種・寸法などを特定し、影響のない場所に移設することが、まず考えられます。けれども、移設する場所がなかったり、移設する際に運転(供給)停止が出来なかったりすれば、何か他のことを考えなければなりません。
 他のことというのは、たとえば、全く新しいルートに新設し、立坑などに影響する部分を廃止する、立坑部分に抱え込んで何らかの防護をするなどです。前者の方法では、結局現在の使用部分に接続することが必要になりますから、あまりとられません。後者の方法は、土留め工法に歯抜け部分を発生させたり、地上からの掘削に支障が出たりしますから、慎重な検討が必要ですが、現状をあまり変更しないため比較的多く用いられています。
 この方法では、施工途中は立坑内等に露出しているため点検が比較的容易で、その分安全なのですが、完成後埋め戻しの際に管の継ぎ手が抜けたり、大きく変形して破損したりする事故が起きやすいことが留意点としてあげられます。
 
 それで思い出されるのは、1970年4月8日に発生した大阪市天六地下鉄工事現場の爆発事故です。
 この年、私は建設会社に入社し、東京都巣鴨の水道配水管シールド工事現場に配属されました。立坑にはφ700mmの中圧ガス管が吊り防護されていました。毎日2回その点検をするのが新入社員の私の役目となりました。この大事故のため発注者による総点検が行われたのは当然ですが、この現場では発注者、受注者、消防合同で大規模な災害時連絡救援演習が行われることになりました。大阪の事故では、被害の拡大が、連絡などの不備によるものであることが大きな理由であったためです。
 ガス漏れによる爆発事故を想定し、消防車、救急車が出動しての訓練です。現場の主任が公衆電話で連絡するところから開始され、私の役目は、「大腿骨骨折重傷」者です。道路に寝ころび気絶したつもりで救急車で運ばれる役目です。無事病院に運ばれたところでお役ご免となり、看護婦(当時)さんにお疲れ様と言って現場に帰りました。
 
 閑話休題。
 今回ご紹介するのは、地下鉄駅部の大規模な既設埋設物の防護です。既設埋設物の防護には大別して受け防護と吊り防護がありますが、開削工事など掘削して下がっていく場合は受け防護は不適当なため、おおむね吊り防護とされます。
 地下鉄は基本的には道路下を通りますから、地上から見ると入り口は下の左写真のようになります。中央の白い建物が作業基地で、建物は防音ハウスです。都市の地下には右の写真のように、無数の埋設管が走っています。

地上の様子 地下の様子


 これらの管類は、基本的に、路面の替わりとなっている覆坑板を直接受ける桁とは別の、吊り防護専用桁からつり下げて今までの地中位置と同位置に確保します。ワイヤーロープが直接管に当たってはいけないので、板などのクッション材を巻きます。また、ワイヤーロープでの吊りだけでは横方向への振れを制御できないため、横位置確保のための鋼材を組み立てて置きます。大口径の場合や継ぎ手付近は、吊る箇所を多くします。

吊り防護 中圧ガス管吊り防護

 各種の埋設物には、管理のため管の種類や口径などを書いたタグがつけられていますが、下の写真は見学者で最近多い中国の方のために中国語も併記してある様子です。

                         中国語表示


 中には下水道管などもあります。下水道管でも基本的には他の管と同じような方法がとられますが、人孔(マンホール)箇所は少し様子が違います。この左側の写真の場合はマンホールを載せる台を吊っています。手前の管も同様に、先のガス管とは異なり、受け台を吊ってそれに載せています。
 右側の写真は、工事用の配管類を、地中連続壁に取り付けた台に載せています。

下水道マンホール 配管受け台

 
 地下埋設物という概念とは少し外れるかも知れませんが、既存の地下鉄もまた防護しなければならない場合もあります。下の写真は、既存地下鉄の躯体が見えているところです。左側の写真に見える壁の向こうには、地下鉄の電車が走っています。右側はホームの外側です。つまり左側写真の上部の裏側にホームがあり乗客が立っているかもしれないのです。まさか足の下がこんな空間であるとは、ほとんどの人が気がついていないのではないでしょうか。

既存地下鉄躯体(軌道部分) 既存地下鉄躯体(ホーム部分)



 このように、道路下の地下工事は、輻輳する既設埋設物をいかに安全に防護するかという点に細心の注意が払われています。先にご紹介したような事故があってはならないとの思いが、地下工事関係者の努力を後押ししています。


 防護をしてさらに深く掘削すると、本来の工事が始まります。その様子を最後にご覧ください。

駅部最下階 駅部最下階


 
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