シールド工事の現在


【シールド工法とは】

 シールド工法とは、トンネルを掘る工法の1つです。鋼鉄の筒の中に掘削する機械を納め、周囲の土砂の崩壊を防ぎながら、前面の土を回転するカッターで少しづつ削り取っては、その分油圧ジャッキによって前進し、後方にセグメントと呼ばれるコンクリートや鋼鉄製の枠を組んでトンネルを築造していく後方です。土木学会のホームページに、簡単な解説がありますからご覧ください。
 現在では、いろいろな型式の機械があって、それぞれ特色を持っています。これらも、シールド工法技術協会のページに、少し詳しく紹介されていますからご覧ください。

【シールド工法の使い道】

 シールド工法は、堅い岩盤で出来ている山岳を貫くためではなく、柔らかい土砂で出来ている都市の地下にトンネルを掘るために考案されました。当初は川の下など特殊な場所に使われました。日本でも、海底や山岳でも湧水が多く柔らかな地盤のところなどで導入されました。
 日本の都市は概ね沖積層という柔らかい地盤の上に広がっています。また、地下水も豊富で、その土質も砂や粘土など複雑です。それに、日本の都市のように狭いところに密集していると、地上から掘り下げて地下にトンネルを造ることは、なかなか困難になっています。シールド工法を使うにはもってこいでした。その技術が、うまれは外国であるにもかかわらず、我が国で大きな発展を遂げたのはそのためと言われています。
 当初は下水道に多く使われました。電気にも電話にも水道にもガスにも使われています。都会では、これらも地下の大きなトンネルに入れるようになったのです。それらを一本のトンネルにまとめた共同溝というのもあります。
 珍しいところでは、集中豪雨等の際、洪水を防ぐために一時水をためておく遊水池のためのトンネルもあります。
 トンネルといえば鉄道が思い浮かぶように、地下鉄にも使われています。むしろ地下鉄のほうが都会でのシールド工法採用の花形でした。
 最近では、道路トンネルにも使われてきていることは、東京湾アクアラインでご存じでしょう。地下鉄のシールドは直径が7mぐらいで十分ですが、道路となると往復2車線でも12m位になります。東京湾アクアラインは14.14mでした。そうした巨大シールドも、すでに何本か施工されています。

 都市の道路トンネルにシールド工法を使うことが遅れたのは、いくつかの理由があります。
 高架型式の方が安いこと、シールド工法では線形の自由度が低いこと、シールドトンネルは円形が主体ですから、道路にすると口径が大きくなり、上下に無駄な空間が多くなることなどが挙げられます。道路を都市部で地下化すると言うことは、どこかで地上から緩やかに地下へ進入しなければならないので、一般にアプローチ部分では開削工法となります。地下鉄のように、地上へ出る箇所が駅出入り口だけというわけにはいきません。一般に、アプローチはかなり長く、場所の選定も困難です。
 もう一つ、シールドトンネルは、一本の筒状ですから、分岐や合流部分の構造に適さないことがあります。
 これらが、道路トンネルにシールド工法が採用されない大きな理由でした。

 しかし、現今の道路事情は、もう高架型式を採用して地上で工事を行ない、長い間交通を制限することは許されなくなっています。そのため、建設会社は各社競って分岐合流をシールド工法で(つまり地下のみで)行なう方法を考案発表しています。

【道路シールドトンネル見学記】

 こうした中、最近私は3件の道路シールドトンネルの現場を見る機会がありました。それぞれ特色がありますので、ここではまとめて(対比しながら)ご紹介します。なお、各現場とも現在も施工中ですので現場名などは伏せてご紹介します。

 シールド工事はトンネル工事ですが、山岳トンネル工事とちがい、どうしても立坑というものが必要です。最近ではシールド自体を垂直に下降させて立坑として利用する方法もありますが、一般にはまだ、この立坑は、地上から地中連続壁などで土留めをして掘削します。
 さらに、坑内に資機材を運び込む基地として、この立坑周辺に、幾分広い土地を必要とします。
 トンネルは、既存道路下につくられるのが一般的なので、道路の一部をその基地にすることになります。

基地遠景

写真1 遠景1

写真2 遠景2 

  写真1は、現在、写真左下から右上に道路があり、左下方に駅があるため、これの地下に道路トンネルを造り、迂回しなくても鉄道を横断できる様にする工事の現場全景です。黄色のクレーンが資機材荷役用、その手前が立坑、右上の方、白い長方形のものが、防音建物で、この中に掘削残土の処理装置があります。写真2は、違う現場の地上写真です。

写真3 防音建家

写真4 内部

写真3は、道路上に立つ防音建家です。写真4はその内部の一部です。処理設備からベルトコンベアで土砂ピットにたまった残土を、バックホーでダンプトラックに積込んでいます。

写真5 橋型クレーン

写真6 建物内部

 写真5のように、資機材投入部分は屋根がない場合も多いですが、写真6のように、全部建物の中に入れてしまう場合もあります。

 それでは、地下に入っていきましょう。

写真7 坑口1

写真8 坑口2

 写真7は、トンネルの入り口です。坑口といいます。左の曲がった管は坑内換気用のダクト、その下はベルトコンベアです。掘削した土砂を地上まで搬出する方法にはいくつかありますが、シールド工事でこのように全線ベルトコンベアを使用するのは珍しいことです。
 中央は、資機材を奥まで運搬するための電車です。
 写真8は、違う現場の坑口で、シールド機の後部が見えています。発進直後の様子です。これは地上から撮影したもので、このように浅いところからトンネルが始まっています。右側方向がシールドトンネル、左側方向は開削工法によるトンネルで、地上からのアプローチ部です。

 このように浅いところがよくわかる写真があります。

 

写真10 坑口4

写真9 坑口3  

 写真9では2本の換気用ダクトが、地上に出ています。このシールドは少し変わった型式で、下の「H8」という札のかかっているところが坑口の一部ですこれは水平です。矩形のシールドで外郭を大きく掘り、その内部をまた掘って巨大なトンネルを構築するのです。少し離れてみた写真10では、その一つの様子がよくわかります。下に、イメージを載せておきます。

 それでは、坑内にはいります。

写真11 坑内1

写真12 坑内2

 写真11は、完成部分の様子です。距離が長いので、ひとの移動用に自転車がおいてあります。左側にベルトコンベアが走っています。
 セグメントというトンネルの壁の材料は、スチール、ダクタイル鋳鉄、コンクリートといろいろありますが、概ね継ぎ手は直線です。このトンネルでは、ハニカムセグメントという形状のものを使用しています。写真12に見えるジグザグの線が継ぎ手です。

写真13 坑内3

 写真13は、写真9、10の坑内です。坑内といっても、ここが道路になるのではなく、中を鉄筋コンクリートで充填し、トンネルの壁になります。

 シールド工事をご紹介する際、 シールド機械は内側からしか見えないため、写真ではよくわからない状況があります。よく新聞やTVなどで紹介される機械は、工場や立坑内にいるうちに撮影されたものが多いので、掘進をはじめている現場では、当然ながらそうした外側は地中で見えない訳です。
 
 下の写真14は、まだシールド機が完全に地中に入りきらないうちに撮影したもので、シールド機後方の様子とともに、ずいぶん浅いトンネルであることがよくわかる写真になっています。上の明るいところは地上です。

写真14 シールド機後部

写真15 シールド機内部(人物は筆者)

 現代のシールド工法は、土木工事の中で最もシステム化が進んでおり、巨大な1つの工場のようです。

写真16 セグメント自動搬送装置 写真17 中央監視室

 写真16、17はロボットと工事全体を監視できる監視盤です。

 これら他、掘削の方式の違いにより、掘削した残土の処理方法にもいくつかの方式があります。また、資機材運搬の方法などもいろいろあります。
 今回は、私がたまたま方式の異なる現場3カ所を見る機会に恵まれたため、混合してご紹介しました。わかりにくい点、不足の点は多くありますが、それらについてはまたの機会にゆずります。

 最後に、もう何年も切り羽に張り付いて見ていたことが無かったので、今回の記念写真です。

写真18 筆者


 
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