浚渫(しゅんせつ)船
今回は浚渫船の話題です。あまり「身近な土木」とは言えないかもしれませんが、私の専門の関係から、海や川の話題はどうしても少なくなってしまいますので前回の小樽築港に続いてあえて採り上げてみました。

浚渫(しゅんせつ、dredging)とは、港湾・河川・運河などの底面にたまった土砂などを取り去る土木工事のことで、浚渫作業を行う船を浚渫船(しゅんせつせん、ドレッジャー)といいます。

浚渫は、海や河川だけでなくダム湖や湖などでも行われています。陸地から流れ込んだ土砂が底にたまると、船が通れなくなったりダムの貯水量が減ったりして施設などの機能が発揮できなくなります。

浚渫は、通常、次のような目的を持って行われます。
  1. 航路浚渫
    船舶が安全に航行できるよう幅と水深を確保するために行う。
  2. 泊地浚渫
    船舶が安全に停泊できる場所の確保のために行う。
  3. 埋め立て
    水底の土砂をすくい上げて他の場所に運搬し、土地造成を行う。
  4. 床堀
    構造物、たとえばケーソンを据え付ける箇所などのようなの基礎築造のため不良土を除去する。
  5. その他
    養浜などのための材料を採取するために行う。
浚渫工事に用いる浚渫船には、グラブ浚渫船、ポンプ浚渫船、バックホウ浚渫船等の船種があります。

写真1〜3は、ポンプ浚渫船の例です。場所は茨城県那珂湊です。作業中ではなく、写真3の様子から見るとどうも何かの不具合で点検に帰港したようです。

 
 写真1 ポンプ浚渫船(右)(2009年9月11日撮影)

         
写真2 ポンプ浚渫船(前部)(2009年9月11日撮影) 写真3 ポンプ浚渫船ポンプ部(2009年9月11日撮影) 

グラブ浚渫船は、粘土質の土砂から硬質の岩盤までの幅広い土質に適用できるとともに水深50m程度まで掘削できることから様々な浚渫工事で使用されています。

 
写真4 信濃川河口浚渫工事(2013年10月24日撮影) 写真3 信濃川河口浚渫作業中(2013年10月24日撮影) 

写真4、5は、新潟県新潟市の信濃川河口における浚渫工事の様子で、グラブ浚渫船の作業です。写真4のように、グラブ浚渫船に並べて置いた台船に、浚渫土砂を積み込んで所定の場所まで運搬します。

ちなみに、この写真は空中写真ではなく、朱鷺メッセの31階にある新潟市街を一望できる展望室からの撮影です。地上約125mからの眺めは迫力があります。河川は信濃川、上方の色の変わっているところは日本海です。

次は、同浚渫工事の動画です。2分ほどあります。残念ながら、台船は影になってしまう角度からの撮影であり、天候も雨模様で、余り良い資料とは言えませんが、実見する機会の少ない工事なので掲載しました。

 
動画1 グラブ浚渫作業(2013年10月24日撮影)

これらの浚渫作業では、船体を潮や河川の流れに流されないよう固定しておかなければなりません。それには、アンカーにより船体を固定して浚渫するアンカー式グラブ浚渫船(以下「アンカー式」という。)とスパッドを船体から海底に突き立てて船体を保持して浚渫するスパッド式グラブ浚渫船(以下「スパッド式」という。)があります。

 
 図1 アンカー式グラブ浚渫船 図2 スパッド式グラブ浚渫船 

ただし、スパッド式の場合でも潮流の影響を受ける場合等はアンカーを張って船体を固定する必要があり、この場合、アンカーの設置及び回収(以下、これらを合わせて「揚錨(ようびょう)作業」という。)を行うため揚錨船が使用されています。
そして、アンカー式、スパッド式のいずれについても、自力で移動ができないので、浚渫船を移動させるために、揚錨船若しくは引船等の付属作業船が使用されています。(図1、図2の出典及び「これらの」から「使用されています。」までの文章は、平成23年度会計検査結果によっています。)

なお、スパッドとは、浮体(船体)の移動を止めるため、船体から海底へ突き立てる円形または角形の柱状体をいい、スパッド台船とは、スパッドを装備した作業用台船のことです。スパッドは、2本から4本のものがあります。スパッドの押し上げ装置には、手動式、電動式、油圧式があります。

浚渫それ自体とは関係ありませんが、こうした海上工事においては、事故防止のため監視船(写真4)が必要です。

写真4 監視船(2013年10月24日撮影)

以上は海上での実見ですが、こちらのサイトで紹介している千葉県関宿博物館には(同サイトの写真14)使用しなくなった浚渫船と浚渫機の展示があります。

   
写真4 浚渫船山王号前部(2013年9月14日撮影) 写真5 浚渫船山王号後部(2013年9月14日撮影)

写真4は、浚渫船「山王号」で諸元は次のように説明されています。
浚渫船山王号諸元(現地の説明板より)
全長8.07m、全幅4.545m、吃水0.6m、能力30m/h、最大掘削水深2.7m。昭和42年〜平成元年まで現役、分割により陸上輸送も可能。
製造は昭和41年、製造者は建設省(現国土交通省)東京技術事務所。

       
   写真6 水路浚渫機前部(2013年9月14日撮影)    写真7 水路浚渫機後部(2013年9月14日撮影)  

ここにはもう一機展示されていて、「水路浚渫機」と呼ばれています。写真からもお分かりのように、履帯があり水陸両用になっています。関宿水閘門に堆積した土砂を取り除く作業の他に、利根川と江戸川を結んでいる利根運河の浚渫や、中川堤防工事のための浚渫作業に活躍した、と説明されています。
水路浚渫機諸元(同)
全長16.57m、全幅6.202m、全高3.9.4m、能力58m/h、最大掘削水深4.0m。昭和51年〜平成5年まで現役。
製造は昭和51年、製造者は日立建機株式会社です。側面には「建設省」とあります。

浚渫工事は水路等の機能を保持するための重要な工事です。

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